17.04.25 (3/3ページ)
Vol.4

「素材力」2017夏。

ギフトはファンタジーの共有、そして連鎖

「何か目新しいものない?」と人はよく尋ねる。しかし、世の中に新しいものなんてそうそう現れない。それよりも大切なのは、今ある普通の出来事や素材を、今の自分の視点でどう解釈し、どう再構築するかということ。

子どもの頃、大きな石をめくっては覗き込み、そこにどんな生物が潜んでいるか虫眼鏡で観察し、さらに大きくなって顕微鏡の使い方を身に着けたときには気になったものを何でもプレパラートに挟んでレンズを覗き込み、子どもの頃にしゃがみ込んで見ていた世界をもっと深く見て、ファンタジーな世界に感動したように・・・・・・。私も含め、みなさんも慌ただしい毎日の暮らしや仕事の中で、“見落としていること”が結構あるのではないだろうか。少し広い視野で見渡すと、そこにも面白い発見があるだろう。

結局、夢のようなワンダーランドの扉なんて存在しない。何気ない日常の中に、自分でファンタジーな世界を見つけ出すしかないのだ。ギフトとは、創り手が見出したファンタジーを共有することだ。ファンタジーは創り手の中で生まれ、買い手となる人との間でまずは共有される。そして、自分の大切な人の日常の中にもこのファンタジーを、新鮮な驚きや、わくわくする出会いと共に届けてさしあげるもの。つまりは、ファンタジーの連鎖の輪に導き入れてあげることに他ならない。

自分の分身のようなお菓子たちが、まだ見ぬ人々にとってのファンタジーなストーリーの始まりになり、そこから新たにどんなストーリーが生まれるのか、そこからどんな笑顔が生まれるのか、想像するだけでうれしい気持ちになる。この夏も、そんなギフトがどれだけの人たちのファンタジーのスイッチを押すお手伝いができるか、楽しみでならない。

2017年 初夏
パティシエエスコヤマ 小山 進

PREV 1 2 3
TOP