17.10.13 (2/4ページ)
Vol.6

発見=新発見・再発見
〜終わりなき素材探求の旅〜

< Reminder Contents >

01「コブミカン」: 2014年にボンボンショコラに採用したコブミカン。東南アジアでは料理に欠かせないハーブとして用いられているが、以前はそのハーブらしい香りをストレートに活かすクーベルチュールとのマリアージュを考えてショコラを創った。しかし、今回はもっと深いマリアージュを可能にできそうなクーベルチュールがたくさんある。そうしていくつものマッチングのアイデアを試したが、結果的には当時にはなかったペルー・チャンチャマイヨ産のショコラ・オレ(カカオ分48%)を採用することになる。

02 「大徳寺納豆」: 旧作の「ミルク金時タブレット」に、これも旧作の大徳寺納豆を加えてみたら?今回はそんなトライアルも行った。過去にボンボンショコラやタブレットとして大徳寺納豆を使っていたときは、「日本の素材を世界に紹介する」という意味ではストレートな表現も合っていたと思う。しかし、ここ数年で、大徳寺納豆ならではの塩味と発酵・熟成から生まれる特徴的な強い旨みが一番力を発揮するのは、“味の底上げ”として隠し味的に使うことだと考えるようになっていた。この発想は、より料理人的な感覚で素材を捉えるようになってきている表れだと思う。例えるならぜんざいに添えられた塩昆布。まろやかなミルク金時の味わいを、旨みの塊である大徳寺納豆が引き立て、数年前では思いつかなかった、これまでとは全く違う味わいのタブレットが完成した。

03「ふきのとう」: ふきのとうは、CHOCOLOGY 2012で初めて使用した時、花が開いた状態のものを使っていたが、今回は三田産・丹波篠山産の野生の蕾の状態のものだけに限定して採用。庭師の松下君たちが「ふきのとう隊」を結成して15kgもの蕾を頑張って集めてきてくれた。花開く前のふきのとうは、野性味たっぷりのインパクトある青い香りとほのかな苦味が特徴的。2012年とは全く違う味わいの仕上がりに驚く。


04 「苺」 : ふきのとうの産地の近くに、たまたまいつも苺を取り寄せている生産者さんのファームがある。そのため、同じテロワールの素材として苺とのマッチングを考えた。ふきのとうと合わせてツートン構造に。カカオはニカラグアのショコラ・オレを採用した。ちなみに苺の実と葉のコンビネーションには、ドライフルーツのように濃厚なフルーティーさを湛えたシエラ・ネバダを採用。

05 「黒文字」 : ふきのとうが芽吹く里山、苺が実る畑、そしてさらに森の奥深くへと分け入って行くと、そこにもまた新しい素材があった。「黒文字」は、和菓子をいただく際の楊枝の材料となる、クスノキ科の低木。樹木自体に清涼感のある芳香があり、その香りとともに和菓子をいただくというスタイルを築き上げた日本文化の奥深さに改めて感動する。ちなみに、殺菌効果があるため、昔は狩猟で仕留めた獲物が腐らないよう黒文字の枝で覆っていたのだとか。また、その香りが新月の頃に一番濃厚になるという説もあり、こだわり始めればキリがない。先日、東京・西麻布のレストラン「レフェルヴェソンス」に訪れた際、生江史伸シェフはすでに黒文字の香りをアンフュゼしたアイスクリームを作っているということを伺った。これはショコラにも大きな可能性がありそうだ。


06 和歌山の「ゆず」: これまで散々使ってきた「ゆず」という素材を今また掘り起こすのか?という疑問が自分の中にあったが、和歌山の生産者の方が届けてくださった素材は香りのレベルが全く違った。こんなパワフルなゆずが存在するのだったら、ぜひ使ってみたい。ゆずのプラリネには、バスク産のエスペレットピーマンの爽やかな辛さが似合いそうだ。

07和歌山の「赤紫蘇」・「山椒」・「スモーク醤油」: マニアックなこだわりを持つ人の周囲には、どうやら同じようにマニアックな人が集まるらしい。和歌山の作り手は、皆さん本当にマニアックなまでのモノづくりへのこだわりを持っていらっしゃる方々ばかりだ。先ほどのゆずはもちろん、赤紫蘇、完熟山椒、スモーク醤油、チーズ。いずれもかなりパワフルで個性的な品々ばかりだ。完熟山椒は枝ごとアンフュゼして、清涼感あるフルーティーな香りを楽しめるガナシュに。


08「青のり」: 以前、かんぴょうを仕入れていたメーカーさんから届いたまるで馬の尻尾のように長く、ふさふさとした吉野川の青のり。直感で採用したが、澄んだ清らかな淡水の中で光合成をしながら育まれた青のりは、まるで上質な抹茶と同じようなアミノ酸たっぷりの旨味を含んでいた。これはかなりポテンシャルの高い素材だ。

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