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Vol.9

エスコヤマ・ペディア 2018 ~あなたのまだ知らない、エスコヤマ雑学~

es koyama-pedia 03 小山チーズ誕生までの紆余曲折

小山チーズはオーブンに生地を入れてから たった10分で焼きあがる。


今から20年ほど前、世の中に「半熟」と呼ばれるとろける口あたりのスフレタイプのチーズケーキが登場し、大流行していた頃。 私に小さな気づきをくれたあるケーキ屋さんのチーズケーキとの出会いがあった。 それは5?6cmほどの小さなチーズケーキで、ころんと愛らしい形をしていた。 いただいてみると、味はおいしいのだが緻密でしっかりとしたその生地はやや固すぎるように感じた。 聞けば1時間半かけて焼いているのだという。 その時私が感じたのは、これだけ小さいケーキならもっと短時間で焼けるのではないか?という疑問だった。

それから数年がたち、私がちょうど小山ぷりんに続く主力アイテムを考えていた時、ふとその小さなチーズケーキのことを思い出した。あの頃流行っていたような、1箱8個入りぐらいで買えるひと口サイズのスフレチーズケーキを、今の時代にも斬新さを感じるような食感と味わいに進化させて復活させたいと考えた。 あのサイズで1時間半で焼いていたのなら、おそらくもっと短い時間で焼けば当時流行していた半熟タイプよりさらに柔らかく、ギリギリ手で持てて、崩れるか崩れないかという感触のチーズケーキが焼けるに違いない。 手早く焼けるならオーブンの生産効率も良くなるし、一石二鳥だと思った。


そして2007年、幸運なことに豊潤な香りを放つ極上のソーテルヌワインや、フランス産の2種のクリームチーズと出会えたことから、これはいける!と確信できる生地を生み出すことができた。 もちろん、オーブンに入る時間はたったの10分!口の中で淡雪のように消えるテクスチャー、極上のミルキーな味わいを併せ持つ「小山チーズ」が完成した。

それからパッケージのデザインも決定し、いよいよ製造にかかろうとした矢先、なんと材料となる2つのクリームチーズのうち1種が輸入停止になってしまった。 そのチーズに合わせたレシピだったため、やむなく発売延期という事態に。しかしその後、再び北海道産の素晴らしいクリームチーズと出会い、レシピを再度練り直すことで、より完成度の高いものにすることができた。


何とか商品は完成までこぎつけたが、ここでまたもう一つの問題が勃発する。焼きあがったチーズケーキの包装である。フイルムがどうしてもチーズの表面に触れてしまい、箱を開けたときのズラッとキレイに並んだ姿が表現できなかった。そんな中、当時の製造スタッフの一人だった西出が画期的なアイデアを思いついた。「台紙を、腕時計のような形になるよう両端を伸ばして折り加工を入れ、チーズの高さより少し高く立ち上げれば少し空間が出来て、フイルムが表面に触れずに包装できます!」この方法を用いるようになり、理想とするキレイな姿に包装が出来るようになった。どんな商品でもそうだが、レシピを開発し、製造ラインを整え、販売するようになるまでには時として思いもよらぬアクシデントが起こる。しかし、知恵を絞ってそれを乗り越えることで、クオリティも、スタッフの経験値も高められ、よりおいしいお菓子をお届けできるようになるのだと思う。


es koyama-pedia 04 小山ぷりんの役割

ショーケースの空間は小山ぷりんが埋める!


エスコヤマのパティスリー棟を最初に建てた際に、主力商品である小山ロールを陳列するための冷蔵ケースを準備していた。 ところが、小山ロールはショーケースに並べた先からどんどんと売れていき、結局は冷蔵ケースの中におとなしく収まっていることはほとんどなかった。 そのため、小山ロールを入れる予定だった冷蔵ケースの空間はいつもガランとしていて、あまり格好の良いものではなかった。 「せっかくなので、この空間を埋める新しい商品として何か良いものはできないか」と考えて創り出したのが小山ぷりんだ。

当時、北海道の富良野プリンが全国的に流行中で、従来のカップ入りではなく、ガラス瓶入りのとろける口当たりのプリンが注目を集めていた。 私も来店動機の2番目になる商品として新しいプリンを作りたいと思っていたので、以前、私にMacを教えてくださっていたパソコンの先生であり、富良野プリンの生みの親である藤田美知氏にもお会いして色々とお話を伺った。 藤田氏は懐の大きな方で、そんな私に富良野プリンと同じガラス瓶にオリジナルのデザインを施して使うことを快く了解してくださった。

さて、容器が決まったら次は中身だ。 富良野プリンは卵の風味が主役のプリンなので、私はそれとは異なる視点で牛乳が主役のプリンを作ろうと考えた。 そこで各地の色々な牛乳をテストして、コクと風味のバランスに優れた氷上牛乳を採用することになった。 試行錯誤ののち、ミルクの風味豊かで、とろりと柔らかく、まるで牛乳を飲むように食べられる小山ぷりんが完成。 小山ロールに並ぶ定番商品として今日まで成長してくれた。

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