パティシエ エスコヤマ研修旅行

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es koyama IN FRANCE 2015

Vol.13 4日目 Restaurant ES でのディナー WRITER:西出 雅之

営業統括部の西出です。
研修4日目、5月15日の夜は、シェフのご厚意で、お菓子教室を担当する長野さん、ブーランジェリーを担当する児玉さん、製造を統括する大嶋さん、プティガトーを担当する永井さん、そして営業部の私、西出のメンバーでお食事をさせて頂く機会となりました。

普段はそれぞれ働く場所も違えば、やっている事もそれぞれ異なるメンバーではありますが、オープン当初からes koyamaを支えてきた戦友です(笑)
気の置けない仲間という事もあり、話は尽きることなく、ワインも進み、とても楽しい夜を過ごさせて頂きました。

さて、今夜シェフに招待頂いたレストランは、2012年パリの7区、オルセー美術館のほど近い場所にオープンされた「Restaurant ES」。
パリ7区と言えば、数多くのメディアで紹介される、パリのグルメ界でも激戦区と言われるほど美味しいレストラン、 ミシュランのスターレストランが多い地域になります。

「Restaurant ES」も例外ではなく、オープン1年にしてミシュラン1つ星を獲得されました。シェフを務めるのはなんと日本人!! 本城 昂結稀シェフ。
フランスや北欧などの星付きレストランでの修行経歴を持たれる本城シェフ。
パリL'Astrance(アストランス)、マルセイユのLe Petit Nice(ル・プティ・ニース)、スペインのMugaritz(ムガリツ)、コペンハーゲンのNoma(ノーマ)と言えば、一度は耳にされた事のあるレストランではないでしょうか。

ここで気になるのが、お店の名前「ES」 エスコヤマと同じ…

es koyama の「es」の由来は、フロイトの心理学用語で「無意識下の欲求」という意味があり、甘いものが食べたいなと思った瞬間に一番にエスコヤマの名前を挙げて頂いたり、 「ロールケーキを食べるなら、やっぱり小山ロール!」とエスコヤマのお菓子を思い浮かべられるようなお菓子屋でありたいと思いを込めて名付けたと小山シェフは言います。
「Restaurant ES」の本城昂結稀シェフも同じくフロイトからの引用だというから驚きです。

さらに興味深い事に小山シェフとの共通点というべきか、シンクロする部分があったのです。

昨年「サロン・デュ・ショコラ」出店の為、パリを訪れた小山シェフが“気になっていたお店”として「Restaurant ES」に足を運ばれた事があり、その際に
「一つの物語のような構成 日本人が求める料理」と称され、
以下、シェフの言葉をそのままを引用させて頂くと

僕(小山シェフ)が、モノ作りをする上で一番大事にしている「五味(甘み、酸味、塩味、苦み、うま味)」のバランスが素晴らしかった。
「塩味と甘味だけでは平坦な味になりがちなところを、気づくか気づかないかくらいの酸味や苦みを少し加えて、立体的で奥行きの味に仕立てるよう心がけている」という彼(本城シェフ)の言葉に、僕と同じことを大事にしておられるシェフだなと、非常に共感が持てた。

このように語られている。

時期を同じく、小山シェフが生み出されたショコラ。
2014年度のC.C.C.の出品作品である「抹茶&パッションプラリネ」

3種の茶葉を石臼でなめらかに挽いた京都・宇治の極上抹茶の苦み。パッションフルーツのフルーティで鮮やかな酸味。南アフリカ産クリオロ種カカオのショコラオレ38%のまろやかな甘み。この3つの個性をヘーゼルナッツのマイルドでコクのある深い甘みで見事にバランス良くまとめあげているのが、エスコヤマ・オリジナルのプラリネノワゼットです。水溶性の抹茶ガナッシュがまずお口に入れるとすぐに溶け出し、続いて油性のヘーゼルナッツのプラリネがシャリシャリとした食感の後、時間を置いて溶け始めます。その様子はさながら、さまざまな味覚が複雑に絡み合い、豊潤に広がっていくお口の中の小宇宙。一粒で料理のコースを味わうような満足感に満ちています。抹茶とパッションという一見斬新なコラボレーションも、個性が強い素材どうしであるだけに、それらが調和したときの味のインパクト、はじける華やかさが楽しい作品。日本人ショコラティエだからこその発想と味覚の感性を存分に表現した、オリジナルな一粒。

気持ちいいほどにシンクロしているのがわかるかと思います。
小山シェフがこのようにおっしゃるのだから必然的に期待が大きくなります。

店構えは、入口をアピールするようなものは何もなく、看板すらない…
道を歩いていてもレストランと気づく人は少ないのではないでしょうか。
だからこそ気づいた時はそのお店に興味をそそられます。

一歩足を踏み入れると、白を基調にした、飾らない店内
このあとサーブされる盛り付けされたお料理がより一層映えて見えました。

それでは、シャンパーニュで乾杯し、今宵の宴のスタートです。

まずは、ノワゼットのサブレの上に甲烏賊のタルタル、そして帆立のチップが重なります。
さくっとしたサブレに柔らかな甲烏賊のコントラスト、キャビアの塩味がイイ感じに食欲を刺激してくれます。

続いて、薫製した鰻の泡をのせた、今まさに旬の白アスパラガスのスープ。 鰻の風味と塩加減がスープとよく合います。

ここで、キャビアの話題となり、塩分を抑えたキャビアの盛り合わせを特別に追加オーダーされた小山シェフ。快く対応してくださり、サーブされたのがこちら

なかなか山盛りのキャビアを頂く事なんてありませんが、ペロリとなくなってしまいました。
一緒に添えられた仔牛のタルタル、ヘーゼルソース添え
キャビアをオーダーしたのですが、本城シェフの機転の利いたサービスでしょうか
実はこの時点でワインが進んでおりました(笑)

3品目は、うまみの濃縮された地中海産牡蠣を衣で包み、ふんわり揚げたベニエと
牡蠣のエキスを閉じ込めたエスプーマの泡でトピナンブール(菊芋)をサンド
牡蠣の磯の香りと独特のクセがあるトピナンブールが相性ばっちりです。

4品目は、緑アスパラガスにパルメザンチーズのサバイヨンソース、ハーブが添えられています。視覚的にも綺麗な一皿です。

4品目にサーブされたのは、「フォアグラと雲丹」
低温調理されたフォアグラが蕪のソースに浮かんでいます。

まるで生のフォアグラ、お口に入れるとすぅ~と溶けてなくなってしまう食感のフォアグラに磯の香り立つウニ、ふっくらとした自然な甘さのカブ。バランスを感じる一皿です。もちろんそれぞれ単体でも美味しいのですが、合わさる事でそれぞれの良さがさらに際立ちます。

小山シェフが生み出すお菓子もよく似ています。
それぞれ単体は単体で美味しい。さらに重なる事で相手の良さが際立ち、個々も程よく主張する。何よりバランスが絶妙なんです。

試作で出来上がったお菓子を頂く機会もあるのですが、
どうしてもこの「合わせ技」を知っているだけに、まず単体でそれぞれを食べてしまいます。そんな時、シェフからは、間髪入れず「一緒に食べてくれ」と言われてしまいます(笑)

シェフは、素材についても知識が豊富で、その背景までも知りたいと調べられます。
だからこそ、必然的に組み合わさるべくして組み合わせる素材が浮かんでくるんだと思います。
こういった食事の席でも常に味覚のアイデアのインプットをされる
これが、どこかのタイミングでパワーアップしてアウトプットされる。

余談ですが、es koyama のお菓子は皆、ストーリーがあります。
どこどこで食べた、どこどこで見た、感じたものがこのお菓子へと繋がった
仮説を立ててやってみたら思った通りだった。
失敗作と思われたが、ちょっとした機転で生まれ変わった。
ぜひ、HPやFB、添えられたリーフレットに目を通してみてください。
お菓子の向こう側に広がるエピソードが、付加価値としてスパイスを加わえてくれます!!

続いて、魚料理ですが、ブルターニュ産のヒラメをプティポワのソースで。
添えられた春キャベツがアクセント。
皮目がカリッ、身がフワッ 絶妙な火入れのお魚に新緑の季節を感じさせるグリーンピースのソースがよく合います。

肉料理は、パリッと表面が焼かれた小鳩
ナイフを入れると中はとっても柔らかくジューシー
変な臭みは全くなくてカカオの苦みの効いたソースと相性抜群でした。

小さなチーズのチュイールと柑橘のグラニテがデセールへと自然と誘ってくれます。

デセール1皿目は、マラゴナ産アーモンドのブランマンジェ、トンカ豆のアイスに
オリーブオイルが添えられています。

2皿目は、「ガリゲット種の苺、マスカルポーネ、エキストラヴューバルサミコ酢」
崩すのがもったいないですが、その瞬間は快感です。

「お誕生日おめでとうございます!!」と1皿のデザートが
本日は長野さんのお誕生日。
毎年の事なのですが、この研修旅行中にお誕生日を迎えられます。
メッセージ付きのデザートの登場で長野さんもご満悦!!
そんな長野さんをパシャリ

実は、この写真からもわかるように長野さんの誕生日という事でes koyamaのスタッフが お祝いに…駆けつけてくれました。
ではなく、実は最初からes koyama でほぼ貸し切り状態だったんです。

楽しい夜を本当にありがとうございました。