4 ボンボンショコラの創作においても、そして今回初登場の新作のチョコレート菓子たちの創作においても、新素材の存在は大きかった。 冬ギフトカタログにも掲載し、先駆けて紹介していた新素材「ホールフルーツチョコレート」は世間一般にも「SDGs」というキーワードを絡めて説明すれば分かりやすい新素材だが、創り手として、扱う側の立場で見ると初めは戸惑う素材であった。 扱いが難しい面があるのだ。 しかし、幾度も試作を重ねてバレンタインのシーズンには「ザッハトルテ」として皆さんにお届けすることになる。 また、「esシリーズ」の「プラリネサンド-es 金胡麻」という形でも表現することが出来た。 それ以外にも、以前からも世間に登場していたがフルーツクーベルチュールという、フルーツとショコラが融合した素材や、マロンとショコラを融合させ、マロンの味をストレートに表現することが出来るようになったチョコレートなど、近年「前からこれを求めていたんです」と言いたくなるような素材の開発が進んでおり、チョコレートで表現できる味の可能性はものすごく広がっている。 皆さんにそれを感じていただくことが出来るとすれば、冒頭に述べた新作アイテムの数がそれだ。 「生チョコモンブラン」もその一つ。「栗の生チョコ」と言うよりは、前からずっとモンブランの姿がデザインになっているパッケージがぴたりと似合うような生チョコを創りたいと思っていたものを、やっと表現することが出来た。 「苺のヘッコンダ」に関しては、テリーヌ・ドゥ・ショコラ・ヘッコンダの進化バージョンとして「カカオと苺」のマリアージュをテーマにした、ボンボンのようでもありプチガトーのようでもある味わいの表現が出来た。 技術的には難しい部分もあったが、試作を重ね、もっともっとポップで、誰が食べても美味しいと感じていただけるヘッコンダを創ろうと思って コロナ禍はまだ続いていく可能性が高いが、2021年という1年を乗り越えられたことは非常に意味があると感じている。2022年の創作に向けてのアイデアもこれからどんどん溜めていかなければならないが、そこまで気負ってはいない。2021年に受け取ったバトンをキッチリと皆さんにチョコレートという形でお返しし、またバトンの受け渡しをしていくだけだと思う。 最後に、11月に報道があった件については、多大なるご迷惑とご心配をおかけし、申し訳ございませんでした。 生み出したものである。 実際、ヘッコンダを食べたことが無い、という方にはぜひ召し上がっていただきたいアイテムであり、今までのヘッコンダを召し上がられたことのある方にも新しい味わいとしてぜひ召し上がっていただきたいと思う。 そして、「FRAISE fraise(フレーズ フレーズ)」「POM.POMME(ポム・ポム)」は、2020年にオランジェットをリニューアルした時に、このパッケージが色違いで並べば可愛いなあとイメージしていたことと、素晴らしい素材との出会いが重なったことで出来上がった作品である。 ロールケーキやチーズケーキのように今までにあったスタイルのようだが食べれば全く違う。「スタンダードなのにどこか新しい」そんな存在にしたかった。 実際に、これに使用している素材は、エスコヤマオリジナル配合に仕立てた苺ミルクチョコレートであり、これが出来ていなければ、フリーズドライの苺にチョコレートをかける、というお菓子を生み出すことは無かった。 素材ありきの創作である。 ここで語ってきたのは全て素材の話だ。素材を提供してくださる方々のバトンを受け取るにふさわしい創り手であるために、僕たちは日々素材と向き合い、実験を繰り返し、使いこなしていく、それしかない。 近年、エスコヤマ自身が「マニアックにカカオを追求してきた部分」と、ケーキ屋として「親しみやすい味や見た目に落とし込んでいかなければならないと考えてきた部分」の2つが、大手チョコレートメーカーの皆さんの長年の研究を経て生まれた新素材とすごく噛み合っている気がしている。 そのおかげでよりレベルの高いポップ(誰もが大好きな味)なショコラが生み出せるようになった。苺というポップな素材をたくさんの新商品ですごく使いたくなったのもそれが理由だと思っている。現在も全力で改善に取り組んでおり、この改善できた状況をいかにこれからも続けていくかということに心血を注いでおります。 尚、ここで紹介させていただいたアイテム並びにエスコヤマの店舗で販売している商品は全て、適正な管理の下、定められた労働時間のなかでつくらせていただいた物であり、会社として今後も皆さんに美味しいものをたくさんお届けしていきたいと思っておりますので、どうぞ皆さまこれからもご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。小山 進新素材を使いこなすことこれからにむけて
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