2 比ぺることって面白い!を求めて昔から僕は‘‘比べることが面白いお菓子"を創りたいと思っていた。なので、気づけばエスコヤマのお菓子には比べる楽しさが溢れていた。皆さんも日常で紅茶よりもコーヒーが好きだとか、バニラよりもショコラが好きだとか、時には自分と他人を比べてみたり、無意識にも何かと何かを比較しながら生活をしていると思うが、それを意識すると俄然興味が湧いて、一層楽しかったりする。なので、アソートになったお菓子を友達みんなで「どれにする?」と分け合うのもいいけれど、接客していると「できれば自分で比べながら食べてほしいな」と切に思う。食べ比べてこそ味わいの特徴に気づくことができるから。僕の狙ったそれぞれの価値がわかるから。これが創り手としてはこの上ない喜びなのだ。例えば、THEBEST SUSUMU KOYAMA PREMIUM CREATIONSでは、前作と最新作のCHOCOLOGYを食べ比べることができる。リーフレットに綴った僕の言葉とお客さま自身の味覚で、創作の軌跡をたどってもらう。ショコラトリーROZILLAで提供しているテイクアウトのドリンク「チョコレート屋さんのアイスショコラ〜世界のカカオ産地を楽しんで〜」はシングルオリジンカカオを使用しているのだが、日によって産地や品種を変えている。来店していただくたびに違った出会いを味わってほしくって。コンフィチュールでいえば、果肉を丸ごとゴロゴロ入れたタイプと、果肉をすべて裏漉したなめらかなタイプ(シルキーシリーズ)がある。プリンでいうと、丹波乳業さんの低温殺菌牛乳が主役の「小山ぷりん」が代表的であるが、実は本店パティスリーのショーケースには「我が家のプリン」と「昔ぷりん」が並び、全部で3種類ある。ショートケーキのジェノワーズ生地には、はちみつをたっぷりと使ったふんわり弾力のあるタイプと、バターを贅沢に使った口どけの良い‘‘ビーナマッセ’'がある。ミルフィーユは、テイクアウトできる本店パティスリーのものはハラハラと崩れ落ちるフィユタージュで、カフェhanareではバターで生地を包む‘‘逆さ’'を意味する名前のアンベルセタイプだったり……。冒頭に戻るが、こんなにもありふれた世の中なのだから、いろんなことを楽しみに変えないといけないし、提案する側はそれを踏まえて作戦を練る必要がある。ぜひご自身の興味が強いカテゴリーにターゲットを決めて、食べ比べながら網羅していただきたいなと思う。意識しながら食べていただけば、「比べることって面白い!」と強く実感してもらえるのではないだろうか。そして今夏のギフトとして提案する「ベイクドチーズケーキ」も「OHMY inGOD(フィナンシェ)」も、そんな要素を盛り込んだ商品である。
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