4 ふっくらふくらんだ西洋菓子の日本人•関西バージョンを長年続けてきたけど、本来エスコヤマ20周年に向けて時代に寄り添い、時代を超えて修行時代にはヨーロッパに行ったり、フランス菓子を主流にしているパティシエのフィナンシェを食べ、実はたまに試作をしたりもしていた。ただ、当時は自分で商品を開発して会社に提案できるような立場ではなかったので、日の目を浴びることはなかった。そんな‘‘若い頃に濃厚なフィナンシェを食べていた感覚"を思い出して、この度「焦がしバターフィナンシェ」として再現した。昔はカタチにできなかったが、今ではサッと完成させることができたのだ。さて、章のタイトルにもなっている商品名について「どういう意味だろう?」と気になっている方もいらっしゃると思うので触れたいと思う。そもそもフィナンシェには金融家や金持ちなどの意味がある。焼き上がった色あいや、ひっくり返した形が「インゴット(金塊)」に似ていることからだ。そこに「オーマイゴッド」をかけ、『OHMYinGOD(オーマイインゴッド)』とシャレ的な感覚で名付けたのだ。簡単に訳すと「ああ、なんて素敵な私のフィナンシェたちょ」といった感じだろうか。ああ神様、信じられないことが起きた(オーマイゴッド)というほどに僕にとっては奇跡的なほどいろんな経験から誕生したボックスであり、みんながお金(インゴット)を大切にするように、僕にとってこのフィナンシェたちは本当に大切であり、なんという美味しさだ!なんて楽しいんだ!と驚いていただけるような「OH」的要素も強く入っている。そんなニュアンスが相まってこのネーミングは何だかとてもしつくりときたのだ。ちなみに僕はこのプレーンと焦がしバターのどちらも大好きで、その感覚を創り手として表現したかったし、どっちの方が好きだというような比べ方はできないが、今日はプレーンの気分だとか、明日は焦がしバターをコーヒーと一緒に食べたいとか、紅茶にはプレーンを合わせるほうが好きだなとか、その時々の気分で楽しさを深めながら味わってほしいなと思う。初めに述べたように、ここ数十年は次々とハイテクなものが生み出され、本当にいろんなものがありふれてきた。それと同時に僕自身もこれまで数え切れないほどのお菓子を創りに創ってきた。こうしてみると、なんだか世の中の流れと僕のお菓子屋経験の熟成度はリンクしている気がする。だからこそ僕が今、古典的な感覚や現代な感覚としてオリジナリティをひとつのカタチにするということに意味を感じている。の意味合いに還るというのも今だから表現できた。これまでもいろんなチーズケーキを作ってきたが、ポーションで楽しめるという提案の仕方もひっくるめて、このベイクドチーズケーキも10年、20年前では提案できなかった。ただ、前述したように僕の創作はその時々のニーズとフィットしているような感覚を掴んでいるのが、決して今に限定して響くものではなく、僕が常に目指している“時代を超える美味しさ"に今夏も到達させることができたと自負している。最後にひとつお知らせです。エスコヤマは今年の11月13日で20周年を迎えます。友人パティシエたちにも協力してもらい、11月19日にはとびきり楽しいイベントに皆さんを招待したいと思っているのでぜひ期待していてください。小山進20th Anniversary
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