「パティシエ エス コヤマ」が誕生してから10年の間に、
たった1軒のパティスリーが、お客さまの想いや私自身の考えによって
さまざまなベクトルに細胞分裂を繰り返し、新しい姿へと進化を遂げてきた。
自分自身の部屋を作るような感覚でつくった、カフェ「hanare」。
日本文化をコンセプトにつくった、初代ショコラトリー「SHIN」。
その2つの傍らには、京都の路地をイメージした石畳の小道をつくり、
京都の神社・仏閣によく見られる日本古来の植物を集め、手水鉢にめだかを泳がせた。
こうした一連の空間の設えは、私自身の幼少期のイメージを形にしたものだ。
私が幼い頃遊んだ、京都・五条の路地裏は
家々の間をまっすぐに通る、木の塀に囲まれた細長い長方形の空間。
そこにジャングルジムやブランコがあるわけでもなく、
何の変哲もない限定された空間で、いかに面白い遊びを思いつき、
それをもっと面白くする工夫をするか。
それが子どもの頃の私にとっての、毎日の関心事だった。
同じく京都出身の指揮者・佐渡裕さんとも、その話で盛り上がったことがある。
「小山君の発想の原点は?」
「京都の路地裏ですかねえ…」
「正解!(笑)」
今、私自身のものづくりの原点となっているのは、
間違いなくその当時に養われた発想力と想像力だ。
京都、そして日本。
その2つのキーワードは、私の菓子づくりの中において大きな存在を占めている。
しかし、店というものは時とともにさらなる進化を遂げていく。
私自身がさまざまな出会いや経験を重ね、心境が変化すると、
当然のごとく菓子づくりにも少なからず影響を与えるようになる。
ショコラづくりをより極めようとカカオの原産国を訪ねたり、
パリのサロン・デュ・ショコラなどに出展を重ねるうちに、
日本文化色のみを前面に押し出した「SHIN」の空間と、
自分のショコラづくりに対する考え方との間に違和感を覚えるようになった。
空間によって、ものづくりのフィールドが限定されているように感じたのだ。
そんな流れの中で、よりショコラの、そしてカカオの文化の源流に根差した
新しいコンセプトのショコラトリー「ROZILLA」は誕生した。
その後、「SHIN」の跡地につくられたのが子どもたちのための空間「未来製作所」。
そして、そのオープンと同時に発売されたのが牛乳菓「MATTERU ~ 牛乳菓 マッテル ~」だ。
この「MATTERU」は、実は小山ロールよりも先にイメージが浮かんでいたお菓子。
洋菓子でもなく、和菓子でもない。
そんなニュートラルなニュアンスを持つこのお菓子は、
フランスで菓子作りを学んだことがなく、ましてや和菓子作りを学んだこともなく、
30年間、この日本をベースに洋菓子を作り続けてきた私自身のルーツを
そのまま映し出しているお菓子だ。
洋菓子の技術を19歳の時から学び続け、そして今、50歳という年齢になって、
1人の日本人パティシエとして何を伝えていかねばならないのか、と考えた時、
菓子作りの技術やそのスピリットはもちろんのこと、
われわれ日本人が育んで来た文化、歴史、
そこに秘められた深い意味、美意識…
私たちがいつも無意識に行動していることの真の意義を、しっかりと継承していきたい。
守らねばならない事、大切にしなければいけないこと、
そのすべての想いを「MATTERU」という菓子に込めたのだ。
日本人だからこそ作れる、フランス菓子とはまったく異なるアプローチのお菓子。
それは、エスコヤマのパティスリーの中で表現できるものではない。
また、「未来製作所」の中だけでも伝えきれるものではない。
このお菓子が持てる魅力を存分に発揮できるよう、
新しいステージを用意すべき時が来た、と感じた。
「小山菓子店」は、自分が日本人であること、
自分自身のルーツにある伝統と文化について、
もっと深く探求し、それを継承していく~そんな決意の表れなのだ。
「小山菓子店」のために選んだ場所は、「hanare」横の小道の角を曲がってすぐ。
京都の町屋の格子戸をイメージしたエントランスと、風格ある木の看板。
木々の根元には、庭石、青々と絨毯のように広がる苔。
まるで日本庭園の離れにある茶室のような、
しっとりとした風情を設えた3坪の小さな空間。
この新しいステージから、「MATTERU」を皮切りに、
今後、さまざまなインスピレーションが浮かび、新しいクリエイションが生まれることを、
私自身が今、楽しみに“待っている”のだ。
しっとりなめらかな素肌のような、黄金色のビスキュイ。そのバターリッチな薄生地に包まれているのは、ミルクの旨みとバターのコクを凝縮して練り上げた、限りなく濃厚で、ほっくりと柔らかな口当たりのフィリング。まるで濃厚な牛乳だけで練り上げたガナッシュのように、ひと口ほおばれば、お口の中にひろがる甘くやさしいミルクの香りと、深いコク。マダガスカル産バニラのほんのりスイートな香り。それは、子どもたちにとっても、なぜか胸に染み入る懐かしさと、まるで何かに抱かれるように、心和むやすらぎを覚える、デジャヴュな牛乳菓。
6個入り ¥1,566
賞味期限 : 20日(常温)
※本店パティスリーにて販売しております。
エクアドルの地で生まれた花のように芳しいフェアトレードのカカオが、長い旅を経て出会ったのは、まろやかで柔和な日本のミルクとバター。そこから生まれたのが、カカオの香り漂うバターリッチなビスキュイです。その褐色の薄生地の中に包まれたアイボリー色のフィリングの主役は、ホワイトチョコレートのミルク分を煮詰めてキャラメル化させた、ブロンド色のショコラ。それらをまるでガナッシュのように練り上げた、ねっとりとしたテクスチャーが魅力です。熱帯のフルーツ・カカオの華やぎあふれるパートと、ミルキーなガナッシュのようなフィリングの関係は、まるでひと粒のボンボンショコラのよう。その贅沢な風味は、子どもたちにとっても、大人たちにとっても、なぜか胸の高まりと、ときめく予感を覚える、未知なる牛乳菓。
6個入り ¥1,566
賞味期限 : 20日(常温)
※本店パティスリー、ROZILLAにて販売しております。
三田を代表する秋の味覚“利平栗”を使った新しいMATTERUが誕生しました。大粒で甘みが強く、“栗の王様”とも言われるほどの利平栗。エスコヤマの近くにある栽培農家『湖梅園』さんで大切に育てられた利平は、実は栽培が難しく、栽培家泣かせの希少な品種です。そんな利平を合わせて仕上げた栗のフィリングは、ほどよくしっとりとして上品な甘みを持ち、ホクホクとしてあたたかみを感じる栗特有の味わいが生きています。さらに、渋皮栗を混ぜ込んだ生地が餡を包み込み、栗の香りと味わいをよりいっそう引き立てます。マッテルの持ち味である滑らかな食感とともに、秋を感じる“ほっくり”とした栗の美味しさを余すことなく感じる牛乳菓。
[ 利平栗 ]
実は独特の形をしていて、頭部にうっすら毛がはえています。
かなり気まぐれで、栽培家泣かせです。
6個入り ¥1,760
賞味期限 : 20日(常温)
販売予定期間:2024/11/1(金)~12/31(水)
※本店パティスリーにて販売しております。
※販売予定数に達し次第完売とさせて頂きます。
ご了承くださいませ。