2017年6月、エスコヤマでは、カスタードクリームをはじめ、あらゆるお菓子に使用してきた、私が認める最高品質のマダガスカル産バニラビーンズが、全く手に入らない状況となりました。主な原因は、マダガスカルを直撃したサイクロン等の自然災害や、新興国の需要増といった経済的な問題です。
それに伴い、エスコヤマのカスタードクリームもバニラビーンズを使用しないレシピの開発を迫られました。そして、素材探しと試作を重ねる中で出会った「鹿児島県種子島産さとうきび100%の“粗糖”」を使うことで、「蒜山ジャージー牛乳」や「卵」といった素材の魅力をこれまでより引き出した新たなカスタードクリームを生み出すことが出来ました。
私たちの基本姿勢は、「経験に基づき、持てる技術・感覚を総動員し、その日その日に自然の恵みがもたらしてくれる限られた素材を最大限に生かしたお菓子を生み出し、お客様にお届けする」です。それは、料理人や寿司職人の方々と何ら変わりはありません。
その姿勢を形にしたアイテムが、「小山○○」「es-○○」という名を冠したスペシャリテたちです。小山ロールに例えるなら、「今、私たちが手に入れられる中でも最高の素材を使って作るロールケーキ」が「小山ロール」であるということです。
バニラ、チョコレート、ワイン、コーヒーなど、元は全て農作物です。毎年毎年出来が違うのは当たり前です。その事実と、今、手に入れることができている素材全てへの感謝の気持ちを、私たちはお菓子を通して美味しさと共に、世の中に伝えていきたいと思っています。
エスコヤマが認めるクオリティーのマダガスカル産バニラビーンズを次に入荷できるのは、3年先か、10年先か、全く予想がつきません。ですが、次に入荷できたときには、皆様と共にバニラビーンズが使用できるようになった喜びを分かち合い、必ずやさらに進化した小山ロールをお届けします。ご理解のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
自然の恵みによって私たちは生かされています。そのことに改めて感謝し、エスコヤマのものづくりを続けていきます。
2017年7月
株式会社パティシエ エス コヤマ