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1箱(4個入) ¥1,728
30日(20℃以下)
箱サイズ:縦10× 横10× 高さ3.5cm
特定原材料27品目:乳成分、りんご、大豆
2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に始まり、巨大台風や豪雨災害といった身近に感じる自然の脅威や、世界各地で起こる森林火災、海洋プラスチック問題など、あらゆる事象について今まで以上に“自分事”として考えた年になった。そんな状況下で始まった2020年の創作。作品が生まれるにつれ明確になったテーマは、「ALIVE:生きるということ」。地球上の生物は気候変動や巨大隕石の落下で5度の大量絶滅期を経験し、今、6度目を迎えているといわれる。ウイルスは身近だが、絶滅期の話は多くの人が「まさか」と思うだろう。しかし、僕には温暖化や絶滅種の増加がその事実を証明しているようにしか思えない。それでも我々は、先人が様々な困難に立ち向かい、生きるための知恵を継承してくれたように、より良いかたちで次の世代に経験のバトンを渡さなければならない。こうした思いが、今回の4つのショコラを生み出した。No.1は「本能」。木々から花の姿が消える7月。蜜蜂が種を残すという純粋な本能に従い7mに達する高木の「からす山椒」の花から必死に集めた蜂蜜を使った。No.2「知恵」は、薬として利用していた「牛蒡」を初めて食べた先人の知恵に敬意を表して。No.3「神」は、メキシコで「神の飲み物」と呼ばれる「テハテ」を表現した。人は自然の猛威に対し無力さを感じた時、神に助けを請う。そういう意味も込めた。No.4は「RITA」。「大和橘」は奈良時代、都へ続く道に「旅人の命を守るため実の生る木を植えよ」という官命が下り、その時に街路樹として植えられたとされる。「人のために」という、利他の精神を体現した果実だ。これらが表す意味を通じて世の中に、「人類も地球上に生を授かった生物として、一人ひとりが今、やらなければならないことに対して具体的に取り組もう」というメッセージを発信したいと思っている。僕は次の世代にどんなバトンを渡せるだろうか。
生命力溢れる蜂蜜のスパイシーさと
華やかなペルー産カカオのマリアージュ
石川県のとあるレストランで料理に使用されていた「からす山椒」の蜂蜜。スパイシーでパンチの効いたその生命力溢れる特長的な味わいに魅了され、「これは凄いショコラが創れる!」と直感した。合わせたのは、花のような香りとアプリコットのような酸味が特長のペルー・チャンチャマイヨ産カカオのショコラ・ノワール63%。キレよくビターで仕立てた。7月は花が減り蜜蜂には過酷な季節。その時期に開花するからす山椒の花は蜜蜂にとっては貴重なエネルギー源のため、「種を残す」という純粋な本能のままに、地上から7mに達する位置に一斉に花を咲かせる高木に群がる。こうして生きるために集められた貴重な蜂蜜を蜜蜂たちから分けてもらいこのショコラは生まれた。
焙煎の手法が引き出した牛蒡の魅力
甘酸っぱい苺がもたらすポップな可愛さ
今から1,200年以上前の日本では、薬として珍重されていた「牛蒡」。食べることが当たり前ではなかった時代に「誰か」が食べ始めた事がきっかけで習慣として我々にバトンを渡してくれた。そんな先人の知恵と勇気に敬意を表すと共に、バトンを受け取った我々は、未来へとその知恵を繋いでいかなければならない、このショコラにはそんな思いも込めた。以前から牛蒡は、揚げたりパウダーにしたりとそのポテンシャルに気付いていながらもまだまだ納得の行くレベルまで昇華できずにいた。今回やっと「焙煎」という手法で香ばしさを引き出せたことで、着地点が明確になった。焙煎した牛蒡から滲み出るコーヒーを思わせる香りと土っぽさのあるかすかな渋味が、チャーミングな甘酸っぱい苺と出会い、華やかさと大地を連想させる土のニュアンスが共存し、ポップな可愛さと奥行きを感じる味わいのショコラが完成した。
「神」を感じるカカオの力
古代メキシコの歴史とともに
学名を「テオブロマ(神の食べ物)」という「カカオ」。古代メキシコでは、「ショコラトル」の名で「不老長寿の薬」として、王侯貴族たちに飲まれていた。16世紀の初め、アステカの皇帝モンテスマは黄金のカップで1日50杯のショコラトルを飲んでいたという。そんな歴史が残るメキシコのオアハカ地域で飲まれているのが、神の飲み物という名の「テハテ」。サポテカ文明の王族が宗教儀式を行う際に飲んでいた。人は自然の猛威に対し無力さを感じた時、神に助けを請う。そういう意味も含んだ儀式だったのかもしれない。現地では、カカオ+トウモロコシ+カカオの花(と呼ばれているもの。実際は違うが)を合わせた飲み物だ。ボンボンショコラにするときにはトウモロコシは使用していないが、メキシコ産のホワイトカカオとカカオの花を合わせたクーベルチュールをダイレクトにボンボンショコラへと変身させた。シンプルながら奥行きのある味わいである。
時代を超えて受け継がれる精神
未来に香る大和橘
日本固有の自生種として長い歴史を持つ「大和橘」。その香りの上品さや持続性から、古くは「永遠に香る果実」と例えられていた。奈良時代には、旅人の命を守るため都へ続く道に「実の生る木を植えよ」という官命が下った時、街路樹として植えられたようだ。それは「万葉集」のなかで「橘の木陰で休んだ」といった旅人の歌から推測できる。そんな利他の精神を体現した果実は、時代と共にその存在は忘れられ、今では生産地域も僅かだ。それは同時に世の中から「人のために」という精神が薄れていることを象徴する現象なのかもしれない。今回、その大和橘を奈良県で復活させようと尽力されている方からご紹介をいただき、大和橘の果汁、果皮オイル、花そのものと花から採れた蜂蜜など、すべてを使ってボンボンショコラで表現した。誰でもない、他人の命を思う、今、僕が伝えたいことの本質を宿した作品だ。