vol.1
コヤマシェフと庭をつくること 〜虫獲りが大好きだった僕が甦った〜
はじめまして、庭造り日記を書いていく庭師の松下です。
さて、お庭にはそれぞれコンセプトがあり、いろいろな仕掛けが隠されているんですが、それは今後ゆっくり日記に綴っていくとして、今回は記念すべき第1回なので、「コヤマシェフとお庭をつくること」について書いてみたいと思います。
コヤマシェフのお庭へのこだわりは本当にびっくりさせられます。
いろんなアイデアを次から次へと出してくる。
時には困ることもあるのですが、実はすごく楽しいのです。
というのも、シェフはとにかく人を驚かせることが生きがいのようで、出てくるアイデアが実にユニーク。
お菓子のコンセプトは「スイートトリック」なのですが、それは単なるお菓子を使ったトリックではなく、お客様がお菓子を買いにお店に来られるところから、お菓子を口にするまでの全過程に仕込まれています。
三田という立地にも、お店の前のお庭にも。
すべてはわくわくさせたり驚かせたりする「スイートトリック」のひとつなのです。
お庭作りは話し合いながら進めていきます。いや、話し合いというより、むしろ作戦会議だ。
例えば、
「クワガタとか、カミキリムシ呼ぼう。ヒラタクワガタとか木に付いてたらみんなびっくりするやろ」とか、「鳥を呼ぼうぜ。鳥小屋つくろうや」とか、
突拍子もないことを言うのもしばしば。冗談と思って愛想笑いをしていたら、シェフの目はかなり真剣。
本当に虫たちを呼びたいようです。
こんな作戦会議が毎週お庭で行われるのです。
しかし、虫や鳥を呼ぶのは簡単な話ではありません。
カミキリムシなんか呼んだ日には、木に子供を生みつけられて、木が死んでしまう。
鳥はいいけど、せっかくの木の実が食べられてしまいます。あんまりそういったものたちはお庭には歓迎されません。
でも、少し考え方を変えると、木の実を食べている鳥を近くで見ることなんて普段はなかなかできないだろうし、
また、僕も子供の時はとにかく虫が好きで、虫を捕まえることが生きがいだった。
そう考えるとなんだかわくわくしてきた。
完全にコヤマシェフに乗せられてしまったが、僕もケーキを買いに来たお客様を驚かせたくなってきた。
「スイートトリック」ならぬ、「ガーデントリック」だ。
お庭に完成はなく、季節の中でただ時を重ねてゆく。
つまり常に変化しているので、いつお菓子を買いに来られても、前とはすこし違う風景がお庭には広がっている。
だから、もし時間に余裕があるようでしたら、ケーキを買われた後に少しだけお庭にたたずんで、その時にしか見られない景色を楽しんでください。これもシェフのおもてなしのひとつだから。
※これから1〜2週間に一度「庭造り日記」を書いていきます。今のみどころ、お花の話など。
エスコヤマへおでかけの前にこの日記を読んでいただければ、より一層お店に来られることが楽しくなりますよ。
更新日06.5.10
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