2007年、エスコヤマの敷地内にオープンした「es Boulangerie Susumu Koyama Japan」。
開店から9年の時を経て、やっとシェフ小山の思いを反映した空間になりました。

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実は開店当初から「“本物の土”を使ったお店をつくりたい」という思いを持っていた小山。
ただ、当時は、実現のためには欠かせない「一流の職人の方々との“繋がり”」が足りませんでした。

そして、ブーランジュリーオープンから4年後に完成した、左官仕上げによる女性用の御手洗い「恋する乙女の便秘が治るトイレット」。こちらは縁あって、「左官のカリスマ」といわれる「久住章(くすみあきら)氏」が手掛けて下さいました(詳しくはコチラ)。

続いて、久住氏のご長男 久住直生(くすみなおき)氏へとバトンは繋がれ、2013年2月には、「重要文化財をつくるぐらいの思いで仕上げてくださった」と小山が言う、こちらもほぼ全面左官仕上げによるショコラトリー「Rozilla(ロジラ)」が誕生。さらに同年12月、超一流の左官技術による超モダンな「未来製作所」のエントランスへと繋がっていったのです。このエントランスも実は左官によるもの。マカロンのようなやわらかみのある色合いとテクスチャーの立体的な斑点は、一つ一つ手作り。小山が頭に描いたイメージと、それを踏まえた最もふさわしいデザインを現場で創り上げていく作業は、超一流の職人ならではの仕事です。

その流れの中、今回改装に至ったエスブーランジュリーも、内壁はすべて左官仕上げ。
一歩足を踏み入れると、壁がまるで収穫時期の小麦のような黄金色をしています。壁に使われているのは、兵庫県西脇市で生産されていた「大杉」という左官用の土。さらに、「ひび割れ仕上げ」という技法によって、所々に敢えて細かい割れ目が生まれるように仕上げられています。その裏には、職人さんたちの“技術と経験に裏付けられた匠の技”がありました。
店内の雰囲気を左右する土の色と割れ目の大きさなどの表情は、色やひび割れ具合の異なる10枚ほどの壁のサンプルから、小山が選び抜いたデザインです。「壁をどの部分も均一な厚みに塗るだけでも技術が必要なのに、さらに土と藁、水分の配合比率から、乾いた時の割れ目の出具合まで計算に入れている」と考えるとかなりの精度で塗られていることがわかります。小山も「『これが全部同じ厚みで塗られているのか』と、いつ見ても感心してしまう」と言います。

太陽の恵みを全身に受けて育った小麦から生み出されるパン。人類の歴史の中で初めて生まれたパンは丸い形だったといわれるように、丸い形には太陽への感謝の意味が込められています。それはつまり、自然への感謝の形。焼きたてのパンのクープやきつね色をした生地の焼き色、壁のひび割れ……、すべての根源は「自然の力」です。それらが結集し、エスブーランジュリーという空間にふさわしい設えとなりました。

この土壁にふさわしいパンをこれからも提供し続けていけるよう、スタッフ一同よりいっそう努力してまいりますので、これからもエスブーランジュリーをよろしくお願いいたします。