パティシエエスコヤマ研修旅行記2016

Vol.3 カカオ農園 & SAU DEO ランチ WRITER:前川 彩花

こんにちは。入社2年目、販売の前川彩花と申します。
研修旅行2日目、カカオ農園訪問と”SAU DEO”でのランチについてレポートさせていただきます。

朝7時にホテルロビーに全員集合。バス2台に分かれて出発です。私は2号車に乗り込みました。
本日より本格的にベトナム研修がスタートするとあって、みんなのテンションはかなり高まっています!
私達がこれから訪問する農園は、ベトナム南部・ティエンザン省にあります。ティエンザン省は、栄養分豊かなメコンデルタの北部に位置する、農業が盛んなエリア。気候は赤道熱帯モンスーン気候のため湿気が多く、日照量が豊富です。北部や中部と異なり雨季と乾季があり、気温は年間平均27〜28度。高温多湿を好むカカオにとって最適な環境であり、良質なカカオが栽培されています。

ホーチミンからバスで2時間。降りてから農園までの約1㎞は、徒歩での移動となりました。
農園と聞いていたので、長ズボンの方が多数。私も長ズボンで行きました。しかし日本とは比べものにならない暑さと日照りです。歩いている間、あちこちから「暑い!」という声が絶えず聞こえてきます。皆、ズボンの色が変わるくらいの汗をかきました。農園までの道すがら通り過ぎた市場では、生きたカエルやうさぎ、魚、鶏が売られています。日本では目にしない光景に驚きが隠せません。道路までせり出すようにして並べられ、目の前で魚やカエルが包丁や、時には素手でさばかれています。とにかく暑く、周りにはハエが沢山飛んでいて、なんとも生臭いにおいが漂っていました。

市場の衝撃的な光景に目を奪われながら歩くこと約10分、ようやく農園に到着です。
こちらは、MAROU社がティエンザン省内で取引している農園の1つで、オーガニック栽培に積極的に取り組まれていらっしゃいます。また栽培だけでなく、他の農園からカカオを集める集積所のような役割も担っていらっしゃるようです。こちらでは、トリニタリオ種のカカオを栽培されています。トリニタリオ種とは、クリオロ種(良質で、独特な香りがする、希少なカカオ)とフォラステロ種(刺激的な香り、収穫量も多く害虫にも強いたくましさが特徴)との交配種で、比較的栽培がしやすく、力強いカカオ感が口の中に長く残るのが特長の品種です。

醗酵・乾燥の工程も見学させていただけるということで、まず1号車はその工程を、2号車は農園を案内していただくことになりました。2号車の私は、農園から。なんとMAROU社の創業者の一人、サミュエルさんが案内してくださいました。
足を踏み入れた瞬間、実際木になっているカカオの実にびっくりしました。園内には他に、水を蓄えた大きな溝と、カカオの木以外にヤシの木が沢山ありました。このヤシの木は、日陰を好むカカオの実を、直射日光から守る役割をしています。カカオの実を1つ収穫し、割って見せてくださいました。

このカカオ豆は、まだ熟していません。ここから熟するにつれて段々果肉の部分が柔らかくなります。まだ若いカカオだったので、香りは青野菜のような香りでした。
ここでハプニング発生!!!
今回の研修旅行でお手土産係の私。「農園のご主人にお渡しするお手土産を持って、至急1号車の方へ来てほしい」と連絡が入り、30度を超える気温の中、約300mの距離を全力疾走することに!
今となっては笑い話ですが、その時は本当に息切れが全くおさまらなくて、倒れそうになりました。

そうこうしているうちに、次は醗酵・乾燥工程の見学へ。
まず農園から戻ってきた私達に、フレッシュなココナッツジュースをふるまってくださいました。冷たくて、あっさりした味わいでした。干からびかけていた私達の身体が、一気に生き返りました。
一息ついたところで、醗酵・乾燥場所の見学のスタートです。

まずは醗酵工程から。
こちらはMAROU社創業者のもう一人、ヴィンセントさんが案内してくださいます。
カカオポッドから取り出された果肉(カカオパルプ)付きのカカオ豆を2段に分かれた木箱の上段に入れ、空気と触れないようにバナナの皮を被せて約2日間おきます。これをアルコール醗酵といい、この段階では酸素を必要としません。バナナの皮や空気中に存在する微生物の働きにより醗酵は進み、箱内の温度はおよそ40~50℃まで上がります。その後、空気と混ぜるようにして下の箱へ移します。それから4〜6日間かき混ぜ、酸素に触れさせることで醗酵を促します。これを酢酸醗酵といい、酢酸がカカオ豆に浸透することでアルコール醗酵を止めます。この工程を経て、チョコレートとしてのアロマやフレーバーがもたらされます。豆の色も、紫から茶色へと変わります。下の箱に移した豆に触らせていただいたところ、ねっとりしていて、温かかったです。

次に乾燥工程です。

天日干しした後、薄い鉄板にひとつずつカカオ豆を並べ、半分に割って中の色、香りで良し悪しを判断されるそうです。
割ったものを食べさせていただくと、すごく香ばしく、ビターチョコレートのような味がしました。
最後に、醗酵段階で出てきたアルコールを使ったワインをいただきました。美容に良いということで沢山飲みたかったのですが、私には少しアルコールが強かったです。カカオやチョコレートというよりはフルーツワインのような印象を受けました。

カカオ農園の見学を終えた私達は、バスで昼食先のローカルレストラン”SAU DEO”へ移動しました。

小山シェフ、サミュエルさんとヴィンセントさん、通訳の方、エスブーランジュリーのダミアンさん、広報の伊藤さんと同じテーブルに座らせていただきました。
座って早々、シェフからは「レポートか!?」と突っ込まれてしまいました。
小山シェフとMAROUのお二人の、ベトナムのチョコレートや今年の新作ショコラについてお話を間近で聞くことができたり、通訳の方からはベトナム料理の正しい食べ方を教えていただけたり、他のテーブルでは体験できない、とても貴重な時間を過ごすことができました。

最初に出てきたのは、ベトナム風お好み焼き「バインセオ」です。

中には、海老・もやし・青菜が入っていて、それを包む生地は外はパリッ、中はもっちりとしていました。この食感は、米粉と醗酵したお米も使うことにより生まれるようです。
お箸で適当な大きさに取り分け、別皿にこんもり盛られた葉(写真左端)で包み、ニョクマム(魚醤)、砂糖、レモンを合わせた、甘酸っぱい味わいのタレにつけて食べます。葉はホウレンソウのような味のものもあれば、ドクダミやミントなど、数種類ありました。バインセオの中の野菜には塩味がついています。タレをつけると風味が豊かになりますが、葉に包んでそのまま食べるのが、あっさりとしていて私のお気に入りでした。

次は、葉に巻いて焼かれたお肉。しっかりと甘辛い味付けです。サイドに添えられた、くるくるっと巻かれた白いものは、もちっとした食感のライスペーパーです。
ライスペーパー自体は本当にお米の味しかしないので、お肉と食べると味わいがバランスよく、美味しかったです。

チャーハンです。
日本のお米よりも粒が細かく、パラパラとしています。しかしパサつきはなく面白い食感です。
味つけは塩胡椒ではなく、少し甘みを感じました。

デザートは、スイカです。

日本のものと同様に甘くみずみずしかったので、最後に口の中がさっぱりしました。
ベトナム料理は日本でも食べたことはありますが、やはり味付けは少し異なります。今回ベトナムの方に食べ方を教えていただきながら、本場の味を堪能することができました。

カカオの実が樹になっている姿や醗酵から乾燥までの工程を観ることは、私にとって初めての経験でした。カカオ栽培はほとんどが手作業で丁寧に行われ、どれも慎重さが求められるものばかりでした。それはとても大変な仕事であり、見学させていただきながら、「この丁寧さが自分にもあるのだろうか」と自分の普段の仕事への取り組み姿勢と重ね合わせたりもしました。もっと自分ができることを増やし、それを磨いていかなければいけません。そしてこれからショコラトリーRozillaの店頭に立つ際には、今回の研修で学んだことや生産者の方々の想いを、きちんとお客様に伝えていきます。

今回、貴重な体験をさせていただきまして、ありがとうございました。このような体験ができたのも、日頃よりエスコヤマに足を運んでくださっているお客様のおかげです。
次は、乾燥して袋詰めにされたカカオ豆がチョコレートになるまでの工程をお伝えします。どうぞお楽しみに!