Vol.13
18.5.21 (3/3ページ)

5日目:ラファ・ゴロチャテギ氏のお話と小山シェフによるショコラセミナー

そしてチョコレートと一緒に出されたのが、「ボラーオ」と呼ばれるドリンクです。このボラーオもラファさんとアシスタントの方が実演して作って下さいました。

卵白とお砂糖を立てメレンゲ状にしたものを型に流して冷やし固めます。それをお水の中に溶かし入れたら出来上がりです。お代わりを求める方もいらっしゃるくらい上品な甘さの中にコクがあるようなさっぱりした味わいで美味しかったです。ラファ氏のお父様は若い時サンセバスチャンで菓子職人として働いていた時、日の出から日の入りまでボラーオを作り続けることも珍しくなかったと言われていたそうで、当時は何十キロものお砂糖が1日でなくなったのだとか!
それぐらいこのボラーオは歴史が古く、人々の間で親しまれていた飲み物であったことがうかがえます。


続いては、小山シェフによる新作ショコラのセミナーの始まりです。


集まってくださったのは、美食協会会長のルイス・モコロアさんをはじめ、3つ星レストランのシェフ、洋菓子・料理関係の方々約30名余りの方が参加されました。なんと今回は、まだパリでの発表前の「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2018」の4粒と過去に発表している3種類の計7作品を紹介していただきました。C.C.C.の審査員の方々ですらまだ口にしていない新作です!

先ずは今年の新作「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2018」の4粒から。テーマは『What A Wonderful World』
「この世の中にはみんなが思っているよりも、もっと素晴らしいものがある。目線を変えて先入観なしで世界中を身近な物から隅々まで見てみよう」という小山シェフの強いメッセージが込められた作品です。

去年のテーマ「Discovery」(発見)から繋がっていて、例えばフルーツの主役(食べる部分)は「実」と思われがちですが、成長するまでの枝や葉っぱであったり、実周辺にも注意して目をやると驚くべき素材と出会ったりする。そういったところから創作へと繋がって生まれた作品です。このプロセスこそ、僕が最も学ぶべきところだと思っています。


小山シェフの説明を聞きながらショコラを見つめる参加者の皆さん。
「何か特別な食べ方はあるのかい?」と、真面目なルイス会長から質問がありました。
「それでは、僕が合図するまで口に入れないで下さい。先ずはショコラを持ち、遠くからゆっくり鼻に近づけて、香りを楽しんでください。そしてショコラを№1,2,3,4と順に半分食べていただいて、残りをまた1番から順に、という流れが美しくコース料理をいただいているかのような感覚になりますよ」と小山シェフ。


「これだけ人がいたら、絶対フライングする人がいるんですよ!」と、シェフの一言で会場に笑いの声が広がりました。ショコラを食べるにあたり、最も大切なことを伝えながらもこうやって場を和やかにすることができるシェフの話術には毎回感心させられます。

シェフの合図で、みんなが一斉に半分ずつショコラをかじり丁寧に味わっていきます。目を閉じて食べる方やショコラを口にした後、目を見開いて驚きの表情を見せる方など、感じ方は人それぞれにいらっしゃいました。
先日訪れたエスペレット村で、ティエリー・バマス氏にもテイスティングしていただいた時も、こうやってシェフと共に自分たちが試作を続けた末に完成したショコラを、世界の美食家の方たちが食べているのを見ていて、鳥肌が立ちました。


今回の研修旅行で数々の素晴らしい料理を味わい、魅せられ、バスクの食文化の奥深さ、新しいモノを受け入れる懐の広さを感じました。その一方で、バスクの皆さんにもエスコヤマのモノづくりや、シェフの美味しいものを追求し妥協しない姿勢、探求心がしっかりと伝わったのではないかなと思います。
また、自分はエスコヤマ全体の役に立てるように何をするべきなのか、何が出来るのかを把握して、目の前の問題を一つずつクリアにし、先輩ショコラティエにぶら下がってばかりではなく、自ら先を読み考えて行動できるようになれるよう一所懸命努力していく決意をしました。それが、研修旅行へ連れて行って下さったシェフへの恩返しだと思っています。


小山シェフ、貴重な経験をさせていただきありがとうございました。この経験をしっかりと毎日の仕事に活かしていきます。


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