「ペドロヒメネス種」の干しブドウのみから生み出されるシェリー酒「ペドロヒメネス」。このお酒は、熟成された深い甘みとビロードのようにごくまろやかな口当たりが特長です。その深い甘みとブドウ感に合わせたのが同じく「熟成」によって生まれる日本の伝統的な調味料「醤油」でした。醤油は、煮切ることで角が取れ、味に丸みが出ます。和をベースにしたフランス料理のようなイメージで、もっと新しい醤油使いが出来るのではないかと思ったのです。そして、「煮切り醤油+ペドロヒメネス」の組み合わせの味わいを最大限に引き出せるのは、レーズンやベリーのような酸味と熟成感を特長として持っているコロンビア産カカオの「シエラネバダ・オレ52%」。和の醤油と洋のペドロヒメネス、そこへ南米コロンビアのシングルオリジンのショコラ・オレという新たな要素が加わり、味の「奥行き」や「深み」を、一粒のショコラとして、存分に表現することができました。
デコールは、醤油がタラリと垂れている様子をイメージしています。
中国・広東省潮州にある鳳凰山の樹齢数百年というお茶の樹から取れる単叢(シングルオリジン)の烏龍茶「鳳凰単叢蜜桃香」。樹齢の長い樹は長い年月をかけ、立派な根を張り、土中から、お茶にとっては最も大切な「コク」を左右すると言われるミネラルをたくさん吸収しています。そんな高いポテンシャルを持つ茶葉は、摘み取ったのち、自然の力を利用した発酵と、熟練の職人の手による火入れの作業によって、桃のようなフルーティで甘い香りをまといます。「この桃のような素晴らしい香りを持つ烏龍茶には、マンゴーが合う」と直感し、ボトムはマンゴーのガナッシュの二層構造に。それが見事にマッチし、お茶の持つ桃のような香りを活かすマリアージュが生まれました。ひと口含めばお茶の甘い香りが静かに広がり、下層のマンゴーの酸味がフルーティな桃の香りを際立たせます。アフターはフルーティな余韻が印象的。力強くも繊細な桃の香りを活かすため、シンプルにプレーンなショコラ・オレ(カカオ分40%)を選びました。まるで自然に生まれたかのような創作によって生まれたショコラです。
デコールは、桃のような甘い香りが特長の烏龍茶に、太陽の光を燦々と浴びたマンゴーが漂う感じを、風を吹かせて表現しました。
「ゲイシャチェリー」は、「ゲイシャ」のコーヒー豆の製造過程で外された、赤紫色に熟した大粒の果肉を約2週間かけて丁寧に天日干し乾燥されたものです。いちじくのような濃厚な甘味のある果肉、プラムやベリーを思わせる深みのある酸味、花のような香りなどを持ち合わせた素晴らしい素材です。それをフローラルでドライプラムを思わせる酸味を持つペルー・チャンチャマイヨ産のショコラ・オレ48%に合わせました。
ゲイシャチェリーのガナッシュは黒糖を思わせる素朴な甘味を宿しています。その立体的な特長を生かために、ボトムにはライチのガナッシュを配しました。上層だけを味わえば黒糖のような風味ですが、そこへライチのフルーティーさが加わると味に分厚みが出てきます。それは、あたかも神様が新しいフルーツを創ったかの如く、一つの新種のフルーツが生まれたかのような作品が生まれました。さらに、作品としての完成度を上げるため、「パナマ・ゲイシャ・ナチュラル」の豆を微粉砕し、コーティングとガナッシュの間に薄く敷き、パンチの効いた酸味とほのかなコーヒーの余韻漂うショコラが完成しました。
デコールは、深みのある赤で完熟したゲイシャチェリー(果実)に見立て、さらに風を当てて少しくぼませる事で果肉が種から剥がれた様を表現しました。
辛口な一般的な物に比べてまろやかな香味を持つ「味淋(みりん)漬」という名が付けられた京都生まれの奈良漬。「発酵」「熟成」を経て素晴らしい味わいが生まれるこの素材を200度以上の高温で1~3秒間プレスするという、日本の最先端の技術である「瞬間高温高圧プレス」にかけ、フレーク状に変身させました。メインはザクッとした食感を残したピエモンテ産ヘーゼルナッツの自家製プラリネとコスタリカ産シングルオリジンのショコラ・オレ40%としながらも、隠し味としてこのために特別に創ったマンゴーのフリーズドライを混ぜ込み、さらに、コーティングの間に発酵後のカカオにパッションフルーツのピューレを加えて二次発酵させて創り出されたショコラを上下に薄く配してエキゾチックなアクセントを加え、その酸味で、より立体的な味わいをデリケートに表現しました。
デコールは、土から抜き取られた大根がチョコレートへ溶け込んでいくようなイメージのデザインです。
2016年11月下旬 発売予定
1箱(4個入り)1,728円