vol.26
「バトン」

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 もうエスコヤマの薪ストーブをご覧になりましたか?薪ストーブがパティシエ エスコヤマに来たのは去年の暮。お店に来ていただいたお客様に暖を取っていただくためにテラスに設置しました。
写真
当初のデザイン画
 
写真  この薪ストーブのプロジェクトの始まりは一昨年の冬。「どうにか少しでもお客様に暖たかさをお届けしたい。なにかいい方法はないだろうか。」というシェフはじめスタッフのみなさんの思いを具体化しようと、動き始めました。 さて、薪ストーブを探すことになったが、そこで白羽の矢が立ったのが軽井沢に工房がある鐡音工房の村山さん。お電話をして、早速打ち合わせに来ていただいたら、初めてエスコヤマに来たのに、どうもエス コヤマのことを知っている様子。「もしかして、コヤマシェフは吉祥寺の川上さん夫婦とお知り合いですか?」と質問されたので、
「え、Jap工房の川上さんですか?」と聞き直すと、
「あ、やっぱり。あの夫婦から別の件でコヤマさんのことは聞いていました。」
「それなら、話は早いっす。今からシェフに電話するんでお会いしてください。」とすぐに電話して、話はとんとん拍子でJap工房さんのデザインで鐡音工房の村山さんが制作してくれることになりました。
Jap工房さんはこの日記の中でも紹介させていただきました(庭師日記 東京一流会議 参照)が、聖鬼魔Uや仮面ライダーなどかなり幅広い衣装類のデザインを手掛けるご夫婦で、コヤマシェフのステージ衣装も手掛けたご夫婦です。コヤマシェフは川上さんご夫婦には前からいろんなものをいっしょに作りたいと思っていたようだったので、願ったりの話ですが、偶然にしてはよくできています。
出会った人がコヤマシェフの知り合いの知り合いで、相手がコヤマシェフのことを友人伝いに話を聞いているってことは、最近珍しくないんです。

「でもなぜこんなことが頻繁に起きるのか?」

それはただコヤマシェフが有名になったから、っというだけでかたずけられる問題ではありません。

さて、どうしてでしょう?

話は戻って、お互いのスタンスをわかったクリエイター同士だと話が早い。今回の薪ストーブもすぐ話が決まって、デザイン開始。まあ、デザインが出てくるまでは時間がかかるんですが、さすがに、待った甲斐がありました。それはとてもとても感動する薪ストーブが出来上がりました。どうしてもクリスマスに間に合わせたかったんで、制作はものすごいせかしてしまって鐡音工房さんには申し訳ないことしましたが、妥協なく取り組んでいただき感謝しております。設置できたときは何もしていない私ですら達成感を感じるぐらいいい出来です。コヤマシェフもご満悦。薪ストーブを見るなり「鉄という素材の力がとてもいいなぁ。今度はあれを作ってもらいたいなぁ。」と薪ストーブの感想かと思いきや、すでに次の構想に入っていました。いいものと出会ったとき、その感動はすぐに次の原動力となって進んでゆく。シェフは相変わらずです。早速、鐡音工房の村山さんと次の制作相談をしていました。

写真  年が明け、シェフから煙突回りのデザインの修正が必要だったのでその作業に鐡音工房の村山さんが来てくれた時のことでした。
「しばらく使ってみてどうですか?」と村山さんがシェフに尋ねると、
面白い答えが返ってきました。
「(この薪ストーブは)デザインもすごくいいし、鉄の質感自体も好きですね。すごい気に入っていますよ。でも僕がこの薪ストーブそのものが面白いと思いました。薪ストーブって火をともし続けないと、あったかくならないんですよね。そのためには薪をくべ続けないといけない。今、一年目のスタッフが普段の仕事の合間をみてみんなでストーブの火を管理していますが、誰かひとり薪をくべるのを忘れたら火が消えてしまう。それってバトンをつないでいるみたいなものですよね。僕は薪ストーブのそんなところが好きなんです。ここエスコヤマの日常に行われている仕事は、すべてこの薪ストーブの火といっしょ。僕が手渡したバトンをスタッフ自身がしっかり次につないで火をともし続けること。その大事さをみんなにわかってもらいたい。そういう意味でこの薪ストーブの火はとてもわかりやすいんです。でも勘違いしてはいけないことは、お客さまに暖かさを届けたいという気持ちとともにこのバトンをつないでゆくこと。ただ、火をともし続ければいいというわけではないんです。」
と、仕上がった薪ストーブを前に鐡音工房の村山さんと話していました。


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更新日11.3.17


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vol.29 「サプライズのその先」

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vol.27 「目に見えないもの」

vol.26 「バトン」

vol.25 「人を雇うこと」

vol.24 「ホンモノ」

vol.23 〜今年たどり着いた場所〜

vol.22 久住章のトイレット

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