vol.30
「マダガスカルに行くぞ」
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「マダガスカルに行くぞ」、と電話がかかってきたのはまだ梅の花がほころんだ頃だったと思います。その理由はマダガスカルにあるドモリ社のカカオ農園を見るためです。カカオはそもそも南米原産の植物ですが、フランス人がマダガスカルを植民地にしていた時代に持ち込んでプランテーションを始めたのがきっかけで、今でも生産されています。コヤマシェフはこのマダガスカル産のカカオがお気に入りで、以前から現地を自分の目で見たい、との思いがやっと実現することになりました。コヤマシェフ自身、エクアドルには数回カカオを見るために訪れていたのでしたが、マダガスカルは今回が初めてです。ちょうどこの11月に出版予定のチョコレートの本でシェフが自身で使っているカカオを紹介したり、そこで働く人たちの生活や思いをたくさんの人に伝えたい、ということも重なって、このマダガスカル行きが決まりました。

また、今までコヤマシェフが少しづつ暖めてきた計画、それが今年の冬から具体的な形になります。そのイメージを膨らませることも、今回のマダガスカル行きの大事な目的です。
それは、
「新しいショコラショップのイメージを膨らませること」です。
今エスコヤマの「Musee」の横に新しいショコラのお店を計画しております。お店のイメージを膨らませるための素材、アイデア探し、ということも今回のマダガスカル行きの大きな目的です。

   

 マダガスカルを訪れるということを想像しただけで、テンションがあがります。マダガスカルはアフリカ大陸から地殻変動で分かれてから独自の自然が進化を遂げた島。一説によると80%以上の動植物が固有種だそうです。つまり、マダガスカルにしか存在しない動植物が山ほど住んでいるのです。庭師としてはパラダイスですね。

マダガスカルへは日本からは直行便はありませんので、タイのバンコク経由でマダガスカルへ向かいます。バンコクでのトランジットはおよそ3時間。まあ、そんなに悪くはありません。さて、これからどんな旅が始まるのかわくわく胸を躍らせているうちに3時間ぐらいはすぐに経ってしましました。マダガスカルエアーに乗り込みいざ出発、と飛行機内で座席に着いた時、見慣れない光景に出くわしました。 突然、キャビンアテンダントさん達がガスボンベのようなものを両手に持ちながら機内を笑顔で歩き回り始めました。そのボンベからは黙々と煙があがっています。かなり強烈なココナツの香りが煙と共に機内に立ちこめ、機内がうっすらと煙っています。絶対に体によくない匂いでした。その意味不明な行為に対していっさい説明はありません。しかし、キャビンアテンダントさんの顔は明らかに、お客様によかれと思いサービスで煙をまき散らしているのですが、誰も喜んでいる乗客はいません。これからの旅はただ旅行ではない、という警告めいた洗礼を受けたようにも思えました。

マダガスカルエアーの飛行機

 マダガスカル空港に到着したのは夜の11時頃。日本との時差がマイナス6時間。なんだか得した気分です。空港につくと、飛行機から階段で地上におりて、飛行場を歩いて空港建屋まで向かいます。首都アンタナナリボは高地のため、冬であるこの時季は結構冷えます。寒いしこの空港はとても暗くて、よくこんな夜中にこんな暗い空港に着陸できたもんだ、と思わず感心してしまいました。空港の建物内に入っても薄暗い。最近は先進国しか訪れていなかったので忘れていましたが、ここは世界最貧国の一つマダガスカルの空港です。煌々と光を炊いた近代的な空港があるはずがないですね。

 無事荷物をピックアップし、入国審査を終えて、今回の旅の通訳兼案内人の方を探しに外に出ると、 「エス コヤマ」という札を思った男性2人を発見。挨拶も早々に早速用意してくれていた車に案内されました。荷物は荷物運び係の人たちが運んでくれます。車に乗り込む前に、両替だけは済ませておかなければなりません。現地通貨はアリアリ(Ar)。思わず勢いよくお金を使ってしまいそうになる通貨の名前です。10000アリアリはおよそ390円。私は30000円両替したのですが、ものすごい数の札束を輪ゴムで二つ折りにして、投げるように渡されました。悪いことをしない限り日本ではこんなお金の渡され方はしないでしょう。普通旅行で30000円の両替だと心もとないのですが、この札束の量を見ると左手でうちわを仰ぎたくなります。もちろん財布になんて入る量ではありません。小山シェフは両替して1,800,000アリアリを受け取っていましたが、その半端ない札束の量に「さすがシェフ。やっぱ違う。」と思わずうなってしまいましたが、よくよく考えると70,000円両替しただけでした。

 空港の外に用意していただいていた車は少し古めのワンボックス。もっとぼろぼろの車を想像していましたが、意外にきれいな車でした。こういった旅ではぼろぼろの車の方が雰囲気がでるもんだから、きれいな車を用意していただくのはありがたいのですが、少し残念に思うところもあったりもします。余談ですが、この旅ではたくさんの車に乗ることになりました。しかし、どの車も結構いい車を用意してくれて、結果として一番ぼろい車は私がコヤマシェフを迎えにいった軽トラだということでコヤマシェフと私の中では話に落ちがつきました。

 車に乗り込んで、すぐにホテルに向かいます。首都アンタナナリボの中心にあるホテルに今日は宿泊する予定です。ホテルに向かう車の中、窓から外を見るのですが、町全体が薄暗い。夜なのだから当たり前かもしれませんが、首都の中心に向かう道がそんなに暗いと、いったいどこに連れて行かれるのだろうか、と不安でした。この国はあんまり安定的な電力供給がされていないそうで、首都でも頻繁に停電が起きるのだそうです。2年前なら「貧しい国だな?。」としか思わいませんでしたが、今は、むしろ「それでも原発の不安に怯えないで済むならそれはそれでいいかもしれない。」と思ってしまいます。何が発展で何が幸せか、経済的に貧しい国と日本のどちらが幸せなのか、この旅の中で幾度となくこの問いを考えさせられました。どうかこの国には原発が出来ませんように。

30分ほど車で走ったでしょうか?何となく町らしい雰囲気が出てきましたが、何せ暗いのであんまりよくわかりません。暗い町を車の中から見ながら、今自分が南半球のアフリカの横っちょにある島にいることが不思議でなりませんでした。ホテルに到着。背の高い建物のホテルでした。今日のホテルは首都のアンタナナリボで1、2を争うホテルだそうです。チェックインを済ませている間に、大勢で荷物をホテルに運び入れてくれて、部屋まで運んでくれました。建物内はパリサンダーというマダガスカル産の高級木材をふんだんに使って重厚な作りになっています。ホテル内はそれなりに明るいのですが、それでも、万が一の停電に備えて枕元に懐中電灯をおいて寝るようにとガイドのジョセさんに言われました。無事にマダガスカルに着いたということと、これからいよいよ始まる旅の安全を祈願してホテルのバーで乾杯しました。

 
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更新日12.10.16


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