vol.30
「マダガスカルに行くぞ」
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 朝は5:00に起床。朝食の前に散歩に出かける。何とも気持ちのいい朝。夜の雰囲気もよかったが、朝の清々しさは格別です。ここヌシベに着いて思うのは、首都アンタナナリボの空気がどれぐらい悪かったのかということ。土埃に排気ガス、ものが腐った異臭などが混じり合った独特の匂いがここにはありません。
 散歩をして、朝食を食べたら、直ぐに荷物をまとめていざ出発。残念ですが、我々は先を急いでいます。
アンバンジャまではガイドのジョセさんの他にもう一人ガイドさんと運転手が同伴してくれます。港までは車で行き、そこからは船に乗り換えます。
港までは車で30分の道のり。港へ行く途中、運転手さんが急に車を止めました。
「運転手さんはその木にカメレオンがいると言ってます。」とジョセさん。
「お、マジで。どこや。どこや。」とこの旅一番のテンションでコヤマシェフが車から飛び降りていきました。
車の横にあった木の枝を運転手さんが指差しています。
指差した枝の先にカメレオンがいます。
「あ、カメレオンや。」
実は先日この木にカメレオンを見つけたから、今日もいるかなと思ってチェックしていたそうです。「まっちゃん、捕まえろ。」とコヤマシェフから司令がでます。

しかし、このビジュアルの動物を素手で捕獲するのは勇気がいります。何せ小さい恐竜です。しかも、噛まれたら、少し痛いらしいです。ネタで一度くらいは噛まれてもいいかな、と思ったりもしましたが、早まるな。まだ先は長い。とりあえず、カメレオンが捕まっている枝を折って、カメレオンをゲットしようと試みるも、失敗。カメレオンが下に落ちてしまいました。落ちたカメレオンをすかさずコヤマシェフが素手で捕まえました。
「よっしゃ。捕まえた。ここを掴むとかまれる心配がないんや。」と
カメレオンの首根っこを押さえています。

コヤマシェフは虫やこの手の動物を捕まえ慣れています。とりあえず、記念撮影して、コヤマシェフは早速Facebookにアップしていました。ちなみに、マダガスカルには世界中に生息するおよそ50種のカメレオンの内の半分が住んでいるそうです。この旅の間で4匹のカメレオンと出会いましたが、いずれも違う種類のものでした。その一つはコヤマシェフが車に走っている最中に見つけたのですが、 「絶対この辺には(カメレオンが)おると思ったんや。」と、相変わらず、鋭い観察力と勘で車の中からカメレオンを見つけていました。いくらなんでも車が動いて時に、保護色のカメレオンを見つけるなんて、と思う方もいるかとおもいますが、それができるのが虫取りのベテラン、コヤマシェフなのです。コヤマシェフは闇雲にカメレオンを探すようなことはしません。一度カメレオンがいる場所がわかると、次からはカメレオンがいそうな場所をある程度想定しながら、狙いを決めて探してゆく。見つかったカメレオンの方も、「いくら保護色とはいえもう少し隠れろよ」、と突っ込みを入れたくなりますが、この国にいればついカメレオンものんびりするのかもしれません。カメレオンの皆さん、コヤマシェフに狙われると見つかっても仕方ありませんよ。

 カメレオンをまた、木に返して、また車へ乗り込み港へ向かいます。今日は大きな木の間を抜けて車を走らせています。

 港は思いのほか小さかったのですが、本島から来た人、今から本島に行く人、たくさんの荷物が集まり、それなりに賑やかでした。今から海を渡ります。これから行く場所は外国人が足を踏み入れるような場所じゃないので、私たちのためだけにチャーターした船を港で待たせているそうです。船をチャーターするなんて、なんて贅沢なと、思っていましたが、港についたびっくりしました。そこに用意されているのは、
小舟です。モーターは付いていますが。「まさか、これで本当に海を渡れるのですか?」そう思う反面、ここで豪華な船が用意されていると、面白くありません。というか、恐らく、用意してくれた船はこの港ではとても良いものだったのだと思います。

岸から船には微妙に距離があるので、そこにいる荷物運びの人たちに抱えてもらって船に乗り込みました。この国の良いところは、とにかくたくさんの荷物持ちの方が空港や港にいることです。彼らが荷物を運んでくれるので助かるが、その数が多いので荷物が取り合いになります。

さて、船に乗り込んで船出です。おおよそ40分ぐらいの航海らしいが、小さい船でも結構なスピードを出して走り出します。水面をぴょんぴょん船が跳ねて、船が水面をたたく度にお尻が痛いが、とてもスリリングで楽しい。

しばらくすると、小さい木舟に乗った子供達が海で素潜りをして何かを捕まえているのが見えました。また、その向こうには木で出来た帆船が漁をしています。ある船は船底に穴があいて水漏れしているのでしょうか、水を掻き出しながら漁をしてます。

漫画以外であんな景色を見たことはありませんが、焦ったそうぶりはありません。おおらかな景色です。21世紀にまだこんな帆船があって、こんな生活をしている人がここにはこんなに沢山いることに驚きです。彼らは日々何を感じながら生活をしているのでしょう。彼らは幸せなのでしょうか?そもそも、幸せという概念がこの地にはあるのでしょうか?日常こそ、生きていることが幸せ、そんな風にも思えます。

 木製の帆船を追い越し、小さい島の間を縫って船は勢いよく進んでゆきます。未知との遭遇。今回の旅行はまさにカカオを探す冒険です。マングローブ林が見えてきました。よく見るとマングローブ林の間に港が見えます。もう港です。遠目でみても、今までの町の雰囲気とは全く違う独特の雰囲気を持った小さな港町が目の前に広がってきました。岩場に船をつけて、また、たくさんの荷物持ちの人たちが我々と荷物を抱えて、岸に降ろしてくれました。ヌシベから本島のアンバンジャまでの船旅はあっと言う間でしたがとても印象的でした。到着。

 ここは今までのマダガスカルとは完全に違います。マダガスカル人でもここにはまずくることが無いだろう場所だと、ガイドのジョセさんが教えてくれました。港には小さい市場があります。そこには、色とりどりの美しい布をつけた現地の女性たちがフルーツや香辛料、食物の繊維で編んだ籠などを売っています。売っていると言っても、それは観光客用のものではありません。顔がベージュの白粉(おしろい)のようなものを塗っている女性もいますが、これは土で出来た日焼けどめだそうだが、これを塗った女性の顔がまたすごくエキゾチックな美しさを感じさせてくれます。我々が描いていたマダガスカルのイメージがまさにここに存在していました。

早速、身振り手振りで「写真をとってもいいですか?」と聞いてみるも、ここの人達は照れ屋さんが多くて、カメラを向けても恥ずかしそうにして、誰も首を縦に振ってくれません。

 人は時として、カメラを向けられることを嫌がりますし、勝手に写真を撮ると怒られたりもします。だから、こういう市場の写真をとるのは意外と難しい。特に、現地の人たちが楽しそうな表情でこちらを向いている写真を撮るためにはそれなりに心が通わない限りは撮らせてくれません。しかし、こういうアウェーはコヤマシェフが強い。コヤマシェフはなぜかすぐその中にとけ込んで、いつの間にかその人たちと仲良くなるのです。今回の旅でいい写真がたくさんとれたのは、石丸さんという腕のいい写真家と言葉の壁を簡単に超えて人と繋がることのできるコヤマシェフがいたからだということは間違いありません。

 港についたら、また新しいガイドと運転手さんが車を用意して待っていてくれていました。カカオ農園までは彼らが案内してくれるようです。ちなみにカカオ農園は地図には詳しく乗っていませんので、現地の人たちなしにカカオ農園に行くことは不可能なのです。港から1時間程度車で走ると畑につきます。途中マングローブの森の中の道を走ってゆくのですが、こんな所に道を通してもいいのだろうか?と疑問でした

ここは大きな木が多い。大きな木が多いということはあまり伐採は行われていないということかもしれません。(しかし、それは大きな間違いで後で分かったのですが、この国の自然の80%以上は既にものの姿をとどめていないそうです。)時折、赤いきれいな花を咲かせた大木が見えます。ノウゼンカズラの仲間だそうですが、優に10mはあります。あちこちに、マンゴーやバナナ、パパイヤやライチの木があります。所々に集落があって、コブ牛や鶏を飼っているのが見えます。色とりどりの布を頭に巻いたりスカートにした女性達がとてもきれいです。布を巻くスタイルは現地の独特のファッションのようですが、アフリカの日差しの下では原色の鮮やかな布と黒い肌とのコントラストがとても美しく見えました。

首都にいた時には感じなかった、「民族的な品」がここにはあります。都市部に比べると、ここの人達の平均収入は1/4程度だそうです。かなり貧しい地域と言っても過言ではありません。しかし、不思議とここに住む人達からは都市部で感じた貧しさを感じません。首都にある貧しさは田舎にある貧しさとは種類が違います。もちろん、経済的には都市部の方が裕福なのですが、貧困を感じるのはむしろ都市部の方です。ここの人たちはよく笑います。陽気で人懐っこいように思いました。経済的な豊かさと人々から感じる感覚的な豊かさのギャップに 「豊かさってなんだろう。」と考えさせられました。

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更新日12.10.16


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