まずは、私達が座っていた席からよく見えたキッチンに案内していただきます。
ここでも、小山シェフが「あ、東京で会ったね!」というスタッフの方に再会。
お持ちしたお土産を囲んで、会話が弾みます。(ちなみに、エスコヤマのお菓子の他に、「桜あん」もお持ちしました。)
棚には、各国で集めたようなオブジェや、鳥のはく製などに混じって、神田明神のお札やダルマなど、日本のものも飾られていました。
何名くらいの方が働かれているのか尋ねると、約60名、20か国くらいから集まっているとのことで、
本当にグローバルな環境です。1階のキッチンでは約20名ほどのスタッフが料理の仕上げを行っています。
皆さんとても真剣です。
裏庭に出ると、バーベキューコーナーがあり、新じゃがを運んでいる方や、牛の骨髄の担当の方が調理中でした。
また、自転車置き場の奥にコンポスト(生ごみを微生物や土壌動物の力を借りて、堆肥に変える方法)の機械を発見! エスコヤマでもロールケーキの端や、生ごみをコンポストの機械で有機肥料に変えているのですが、何だか置いてあるシチュエーションまで似ています。
ここでも全く同じことをしているんだな、と嬉しくなりました。
デザートに使われていた苔を運んでいる方に遭遇。
「急いで2階に行かなきゃ」と言っている彼に続いて、2階のキッチンへと向かいます。
このガラス扉の向こうが2階のキッチン。下ごしらえを中心に行っています。
小山シェフも「大きな音やな!」と驚くくらい大きな音で、ロックがガンガンかかっていました。
こちらは新作を考案するテストキッチン。普段はレネシェフもこちらで実験されているようです。
この時は、赤くなる前の緑のいちごに蜜蝋をかけるという作業と、ビーツを発酵させるという実験中でした。
どんなメニューになるのでしょうか?ピンクの光が当てられているのは、テストキッチン用のハーブガーデンです。木の皮なども食材として使われるのか、瓶に入れられ並んでいました。卵の殻、貝などもディスプレイされています。
ここで、小山シェフが「みんなで写真を撮ろう!」と呼びかけると、一瞬で、フロアにいた全員がカメラの前に集まってきてくださいました。しかも、誰からとなく「トウキョウポーズ!」と言って、ピースをしています。このノリの良さと「え、どうしよう」とか「私はいいや」と言う人が誰一人いない、というのも嬉しい驚きでした。
先ほどのデザートに使う苔についた汚れやほこりをピンセットで取り除いたり、葉っぱを少しずつ切ったり…
皆さんのされている作業は気が遠くなるほど単調なことも多く、とても大変なはずなのに、嫌な顔をしたりダラダラ作業したりしている方は全くいませんでした。
キッチンの奥は、世界中から膨大な数が来る予約メールをさばいている(であろう)オフィススペースや、皆が試作品を食べたり、休憩したりするダイニングスペース。休憩スペースにはサッカーゲームまでありました。休憩中に遊んだりするんでしょうね。
隅から隅まで案内していただき、見学も終了となりました。
タクシーを待つ間、ワインセラーの奥のスペースに座って、nomaでの数時間を振り返りました。
まず、「何をもってnomaは“世界一”のレストランなのか」ということについて。
アメリカのTime誌には、nomaの成功を「一部のグルメオタクのような人々だけでなく、経費で落とせる地元のビジネスマンから、なけなしの貯金しか持っていないバックパッカーまで、デンマークにやってくる人々の目的を食へと変えたことだ」と書かれています。
世界中の人たちの北欧料理への価値観を塗り替えた、一国の経済を動かした…確かにすごいことだと思いますが、では人々は、nomaに何を期待してやってくるのかという点について考えれば、決して「味」や、メニューの革新性だけではないと思います。
食事と見学を終えた私が率直に感じていたことを一言で表せば、「心地良さ」です。
小山シェフともお食事中に話しましたが、スタッフの方全員の、自信に溢れ、堂々とした姿勢がその心地良い雰囲気を作っているのではないでしょうか。
スタッフの誰に何を聞いても、オドオドしたり「わからないので担当の人に聞いてきます」ということが一切なく、自分が作った料理でなくても、その一皿に込められた哲学までを自身の言葉で話せる方ばかりでした。
それも、マニュアルに従っている、とか厳しく言われているから、というのではなく、自分の役割を一人一人がしっかりと自覚して自分の出来ること、「nomaの一員として」なすべきことを自然にされていました。
目の前の状況を自分の目で見て、自分の頭で考えて判断するからこそ、全員が驚くほどイキイキと仕事に取り組まれているのだと思います。
この日、私がお会いした皆さんは本当に素敵で、「働く」ということについて改めて考えるきっかけになりました。
ありがたいことに、エスコヤマにも毎日、日本中、世界中からお客様が来てくださいます。
私がパリからコペンハーゲンに向かう飛行機の中でドキドキしていたのと同じように、エスコヤマを訪ねて来てくださる方々は、小山ロールやショコラを召し上がること、お庭の樹が成長していること、Rozillaでのショコラセミナーを受けられること…様々なことを楽しみにしてくださっています。
私自身は広報室で働かせていただいており、直接お菓子を作ることはありませんが、エスコヤマの一員としてできることはもっとあります。また、何よりも、もっと自分自身の頭を使って考えて動ける人になろう、仕事を楽しもう、と決意しました。
楽しいだけでなく、食事の数時間を通してこんなに元気になれるnomaは、やはりすごいレストランです。
さて、お腹いっぱいになった私達ですが、タクシーで向かった先は、兼子さんオススメの「チーズやハムを自家製で作っているピッツェリア」です。時間いっぱい、コペンハーゲンを食べ尽くします。
Bæstというお店で、サラミや生ハムなどのシャルキュトリー、モッツァレラチーズなどをいただき、
さすがにもうコーヒーすら入らない!というくらい満腹になってパリへの飛行機に乗りました。
小山シェフ、貴重な一日をありがとうございます。
そして皆様、長い長いレポートにお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
明日からがいよいよフランス研修旅行本編となります。まずは南仏・アヴィニョンへまいります。
次の担当者からのレポートをお楽しみにお待ちくださいませ。