研修旅行3日目、5月14日のMOFショコラティエ、フレデリック・アヴェッカーさんのショップ&ラボ見学のレポートを担当させていただきます、ショコラ製造部 中川 豊と申します。
アヴェッカーさんは2011年に19人目となるMOFショコラティエの称号を得た方です。また2014年のC.C.Cでは、「デコール」のアワードを受賞され、小山シェフと同じ表彰台に上がられた方でもあります。
小山シェフとアヴェッカーさんはご友人で、昨年のバスクでの研修旅行でデモンストレーションを見せていただいたティエリー・バマスさんとも親しくされていて、日本に来られた際には三名で食事に行かれたこともあるそうです。
アヴェッカーさんのお店は南仏アヴィニョンの隣町「シャトールナール」という小さな街にあります。シャトールナールとは“狼の城”という意味で、古いお城も山の上に見えました。この辺りは果物や、野菜が豊富に採れるそうです。オリーブの畑も何箇所かバスの車窓から眺めることが出来ました。
また、シャトールナールにはチョコレートのクーベルチュール(原料)メーカーの「オペラ社(Chocolaterie de l’opera)」の本社もあり、アヴェッカーさんのところではショコラや、プティガトーなどに使われているそうです。
アヴィニョンのホテルからバスで20分程走ると、クリーム色と茶色、白色の落ち着いた色合いのお店に到着しました。
そうです。こちらがフレデリック・アヴェッカーさんのお店『Createur de Douceurs en Provence(プロヴァンス 幸福のクリエイター)』です。「住人誰もが定期的に利用できる適正な価格と、分かりやすいおいしさ」をモットーにお菓子作りをされているそうです。
私達が到着すると食べきれないほどのクロワッサンや、パンオショコラをトレーに載せて迎えてくださいました。
店内はクリーム色で統一されていて、可愛らしく、ずっといたくなるような落ち着いた空間でした。入口から向かって右側には大きなガラスのショーケースにプティガトーやヴィエノワズリー、左側にはボンボンショコラのショーケースがありました。
プティガトー、ボンボンショコラ共に20種類程が並んでいました。
ボンボンショコラのディスプレイの仕方が斬新で、種類ごとに並べられたそれぞれのショコラの手前に、上下2層に分かれた吹きガラスのオブジェがあり、下の層には素材が、上の層にはショコラが納められていて、一目でどのような味か確認できるようになっていました。
そして中でも目を引かれたのが、こちらのショコラです。
こちらのカラフルなショコラは冒頭でもご紹介させていただいた、CCCのデコール部門でアワードを受賞された作品です!
よく見ると、トップにはセミが乗っています。
日本人からすると食欲をそそられるものではないので、なんでセミなんだろう?と思われた方もいらっしゃるかと思います。実は南フランスのプロヴァンスでは、「セミが鳴くと、その年は良い年になる」と言われているそうで、この辺ではハッピーなシンボルとされています。
アヴェッカーさんは、「ショコラを食べて下さる皆様に少しでも幸運が届きますように…」とこのショコラを作ったそうです。
セミの色も
紫色は、ラベンダーはちみつを使ったガナッシュ
緑色は、フェンネルの実のプラリネ
黄色は、タイムとレモンガナッシュ
というように素材をイメージされた色になっていました。
この日は、アヴェッカーさん直々にチョコレート菓子のデモンストレーションもしてくださる予定だったので、ショッピングはその後のお楽しみという事になりました。
また、この日は「昇天祭」というキリスト教の祝日だったそうで、家族が集まって食べられるのか、地元の方が驚くほどたくさんのケーキを買われていました。
お店は3階建てになっていて、キッチンも各フロアごとにあります。
1F ケーキの仕上げなど
2F パン、焼きもの
3F ショコラ、飴細工
2Fへ上がらせていただくとフレッシュトマトを使ったタルトを仕込まれていました。
中はグリュイエールチーズやバジル、オリーブオイルが入っていて、さらに上からジェノベーゼソースをかけて焼き上げていました。
みんなの「食べたい」という声にアヴェッカーさんは、丁度オーブンから出したばかりのタルトを切り分けてくださいました。トマトに火が入ることにより甘みが増し、ジューシーでとてもおいしいタルトでした。
小山シェフは「すごくおいしいけど、たとえばアンチョビが入ったらもっと深みが出でおいしくなると思う」とおっしゃっていました。
私達が訪れた時、作業されているのは2Fだけでしたが、効率良く作業をすすめられるように部門ごとにフロアを分けていたり、厨房内は物が少なくすっきりとしている印象でした。
決して大きいとは言えないラボでしたが、使い勝手が良くなるように考えて作業されているのが印象的でした。そして、お店の前で皆で集合写真を撮りました。
見学を終え、デモンストレーションを見学するために、講習会場があるオペラ社へ移動し、ランチもいただきました。その様子は、次のレポートをお待ち下さい!
そして、お店に戻り、ショッピングタイム!
お腹が一杯だったので、ケーキは買いませんでしたが、ショコラをいくつか注文しました。
中でも、とうもろこしを使ったプラリネ【Mexique】が少し懐かしいような味で、とてもおいしかったです。
この日はとても天気が良く、気温も高かったのでショコラとプティガトーを持ち帰るのは難しかったので、来年のサロン・デュ・ショコラでまたお会いできることを楽しみに、お店を後にしました。
私もショコラの製造部に入って2年目になりましたが、 注意されるケースはその時で違えど、根本で直さないといけないことが まだ改善できていません。それは「責任感」です。 昨年度のショコラが忙しくなるバレンタインでは、自分の力不足を痛感しましたが、本年度は自分のできることをもっと増やして、先輩の負担を少しでも軽減し、エスコヤマのショコラをバレンタインのプレゼントに選んでくださる多くのお客様にしっかりお届けしていけるよう努力して参ります。
この旅を通じて、物づくりに対する姿勢だったり、技術や感性など個人的に磨いていかなければいけないところ、また作業がもっと円滑に生産の効率があがるように改善した方が良いところなど、他のお店と比較することができ、世界に誇れるショコラに自分も携わっていることにもっともっと責任感を持たなければならないと強く感じました。
シェフがよくおっしゃる「自分ならここまでやる!」という自分のスタンダードのレベルをできるだけ高い位置に設定し今日の自分より明日の自分、明日より明後日と日々進歩していきます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
次回のレポートは、文中にもありましたがアヴェッカーさんのデモンストレーションです。 永井さんがレポートしてくださいますので、お楽しみに!!