vol.1レポーター井田 大嗣Daishi Ida
Hola!(オラ!)、Bonjour!(ボンジュール!)、Kaixo!(カイショー!)
ゴールデンウィークが終わり、いよいよ今年もパティシエ エス コヤマ海外研修旅行の時がやってきました。
今年、研修旅行に初めて参加させて頂きました、パティシエ エス コヤマ管理部門担当の井田 大嗣がレポートのトップバッターを務めます。
どうぞよろしくお願い致します。
エスコヤマの研修旅行は毎年小山シェフが行き先を決められ、入社2年目以降の社員全員を連れていってくださいます(シェフ、ありがとうございます!)。
「行き先」、そこは、いつも小山シェフの大事な理由、意図があります。
さて、初めに3つの言語の挨拶から入りましたが、一番最後の「Kaixo!(カイショー!)」…???見慣れない言葉が一つ入っていると思いませんか?
実は、こちらの言語は「バスク語」で、「こんにちは」という意味です。
そう、今年のエスコヤマ研修旅行の行き先は、フランス・スペインの国境にあたる「バスク地方」です。行かれた経験がある方はいらっしゃいますか?
バスク地方は、フランス南西部とスペイン北東部にまたがった、ピレネー山脈をはさんだフレンチ・バスク(フランス側)とスペイン・バスク(スペイン側)の地域を指します。
ヨーロッパのチョコレート文化の始まりはバスク地方であり、17世紀にコロンブスが発見したアメリカ大陸からカカオ豆がスペインに渡り、バスク地方のバイヨンヌ港に運ばれました。多くのショコラトリーが点在するエリアでもあります。
また、バスク地方は面積あたりのミシュラン★獲得数が世界でも断トツの1位であることでも知られており、今世界で最も注目を浴びる「美食の街」です。
今回、小山シェフがバスク地方を中心に訪れることを決めたきっかけはここにありました。
大西洋と地中海の食材をいかしたグルメの頂点と言われ、昔から独自の食文化を遂げてきたスペイン・バスク地方。
各地には、Txoko(チョコ)といわれる男性のみの会員制「美食クラブ」が古くから存在します。(「SOCIEDAD(ソシエダ)」ともよばれているそうです)
大きな厨房と食堂がある建物に、美食倶楽部の会員達が集まり、料理を作って食べて憩う倶楽部です。
バスク出身男性であることが入会の条件で、時には会員の紹介が必要なこともあるそうです。
特に、今回の旅行期間中、一番長い滞在期間を予定している「サン・セバスチャン」は『世界一の美食の街』として有名です。
今では世界中から観光客が訪れるこの街ですが、かつては閑散とした時期があったそうです。空港もなく、世界遺産もない。つまり観光資源が何も無い街でした。
そんな状況を変えたのが「料理人」だったのです。
1970年代後半、『アルサック(現ミシュラン3ツ星レストラン)』というレストランのシェフが『新・バスク料理運動』という試みを始めました。
元々地元にある食材とフランス料理を融合させて、新しい食文化を創造しよう、という運動です。その運動(試み)の中で料理人たちは店に集まり、勉強会を開き、技術と知識を教えあったそうです。
そうするうちに、次第に街全体の料理のレベルが上がり、この研究会がサン・セバスチャンを『世界一の美食の街』にする原点となりました。
人口当たりでのミシェランの星付きレストランが最も多い街となった今、それにあわせてホテルなどの観光産業も発展し、この街は『食を観光資源として人を集めることに成功した街』と言われるようになりました。この「地方」を活性化させた成功事例は世界中からモデルとして注目されているようです。
そんなバスク地方を訪れ、小山シェフと共に自分の肌身で現地を感じる、僕たちにとってこれ以上ない贅沢な研修旅行です。
帰国後には、各々が研修旅行で感じたことをエスコヤマ流に表現するエスコヤマ内でのコンテストも開催致します。優秀作品は店頭にて発表させて頂く予定です。是非お楽しみにしていて下さい!
これから、盛り沢山の内容をお届け致します。
是非お読みくださいませ。
5月13日(火)、朝に全員集合。三田から関西空港からアムステルダム経由でフランス・ボルドーへ。
●今回の研修旅行でスタッフ達をを纏めるリーダーは、情熱大陸でもお馴染みの、小山ぷりん/生地仕込み担当の岸本 幸大さんです。みんなで協力して良い研修旅行にしましょう!
●そして、エスコヤマのツアーコンダクターと言えば、チームトラベルクラモトの蔵本さん!今回もよろしくお願い致します!
日本とフランスの時差は7時間。約半日以上のフライトで、現地時間5月13日(火)の夜中にフランス・ボルドーに到着。
この日は空港近くに宿泊しました。
長い移動を終え、さあいよいよ明日から本格的な研修がスタートです。
●翌5月14日(水)朝、エスコヤマ専用バスに乗り込み、一同アルカションへ移動です。
(この写真では勿論確認出来ませんが、バスのフロントガラスには電光表示で「es koyama」の文字が。とても嬉しい計らいでした)
アルカションと言えば「牡蠣」とヨーロッパ最大規模の砂丘「ピラ砂丘」が有名です。
ピラ砂丘に寄る前に、小山シェフの友人である2007年にM.O.Fショコラティエ/コンフィズールを取得されたピエール・ミルガレ氏のショップ&ラボを訪問させて頂きました。
●アルカションの住宅地にオレンジと茶色の配色が特徴的な可愛いショップがありました。ピエール・ミルガレ氏のお店です。
●店内は、白と黄色が基調ですっきりとしています。
プティガトー、アントルメ、アントルメ・グラッセ、ボンボンショコラ、マカロンなどのコンフィズリー、プティフール等、幅広い商品のラインナップです。
●こちらがピエール・ミルガレ氏。190cm以上あるでしょうか。かなり大柄な方です。私達をとても温かく歓迎してくださいました。
ピエール・ミルガレ氏はこのショップを21年前にオープンされました。
最初は28平米しかない店舗から、現在はその約倍の広さに拡張されています。
とにかく一番大切にされていることは「地元密着」ということです。商品の発送も行っていません。
ミルガレ氏も強くおっしゃっていましたが、「ピエール・ミルガレのお菓子を食べたければ、このアルカションの店舗にお越し頂くしかありません。」ということです。
現在はショコラの製造を拡大する為に、隣町にラボラトリーを建設中とのことです。
日本ではバレンタイン時期に限り、ミルガレ氏のショコラを購入出来ることはありますが、常日頃からお目にかかれるものではありません。
●ラボ見学をさせて頂きました。厨房には現地スタッフが3名と群馬県から日本人の研修生(学生)が2名、ちょうど2週間のスタージュ(研修)を受ける為に来仏されていました。こういった研修を定期的に受け入れられているとのこと。ミルガレ氏が親日家なのが窺えます。
この日は「tarte vigneronne(タルト ヴィニュロンヌ)と言われるボルドー産 赤ワインのコンフィを使ったリンゴのタルトを作られていました。皆で試食させて頂きました。
リンゴはミルガレ氏の出身地リモージュ産です。
サクサクしていて、甘さは控えめでとても美味しいです。土台のタルト生地の裏面にバターとグラニュー糖がしっかりと塗りこまれたフイユタージュは薄く、さらに生地の風味を引き立てます。
●そして可愛い掌サイズのカヌレも。マカロンを作られていた製造責任者のパティシエの方をパシャリ。
●続いてショコラのラボを見学させて頂きました。
こちらでは2名のスタッフがミルガレ氏のスペシャリテ「PAVE DE MESTRAS(パヴェ ドゥ メストラス)」というプラリネとフィアンティーヌがしっかりと混ぜ込まれた生チョコのようなショコラを作っているところでした。
この商品名の由来は、「MESTRAS」という街の名前と、近くにある教会まで続く石畳が形のモチーフとなっています。サクサクと歯切れの良い食感は勿論のこと、非常に香りが良く、美味しいものでした。
ラボの中ではミルガレ氏のオリジナルブレンドのショコラ(カカオバリー)も試食させて頂きました。ビターが2種類とミルクが1種類です。それぞれが、ミルガレ氏がチョイスした原産国のカカオをブレンドし作られています。ミルガレ氏はエクアドル産のカカオ豆がお気に入りだとおっしゃっていました。
今後カカオ豆自体を仕入れて、一からショコラを製造することに挑戦する予定のようです。
小山シェフが以前から取り組む予定にしているBEAN TO BAR(※チョコレートをショコラティエが自らカカオ豆の焙煎を行い、全てゼロからチョコを作る工程のこと。
豆の焙煎度合いから、舌触りを左右する撹拌時間まで、小規模だからこそ出来るこだわり抜いたチョコレートづくりの新しいかたちです)と同じだなぁと感じました。
ミルガレ氏ご自身に隅々までとても丁寧に案内して頂きました。パティシエ・ショコラティエという仕事に対する熱意を強く感じましたが、気負っている雰囲気は一切なく、とても自然体な方でした。
小山シェフのお陰でパリとは一味違う、この土地ならではの素晴らしいパティスリー・ショコラトリーに出会えました。また是非アルカションに来た際には立ち寄らせて頂きます。皆さまもアルカションにお立ち寄りの際には、是非とも訪れて頂きたいお店です。
ミルガレ氏のショップ&ラボ見学を終え、アルカションのピラ砂丘へ向かいます。
ピラ砂丘(La dune du Pilat)は、フランスのジロンド県にある砂丘。(ボルドー市内からも電車とバスを乗り継げば行ける場所です)
南北に約3000m、東西に約500m、標高100mを超える欧州最大の砂丘です。
アルカションの中心部から南に9kmに位置し、アルカション湾を一望できます。
ちょっと林道を進み、抜けるとそこに、とてつもなく巨大な砂丘が現れました!
階段で上がる人。またはその横から砂丘を駆け上がる人。「どっちから登ろうかな~」と迷っていると…。
すでに小山シェフは靴を脱ぎ捨て裸足でスタッフと共に猛ダッシュで砂丘を登られていました!
登り切った頃には笑顔ですが、皆もうヘトヘトです…!
頂上に着くと、そこには大パノラマが広がります。
この日は天気にも恵まれ最高の景色を堪能できました!
(写真はありませんが、砂丘から降りる際、ゴロゴロと砂丘を転がりながら降りたスタッフがいたことは言うまでもありません…)
素晴らしいショコラティエ ピエール・ミルガレ氏と出会わせて頂き、地域の名所も堪能させて頂きました。
時間はお昼過ぎ。まだまだ初日も中盤です。続きも是非お楽しみにしていて下さい!
後半のレポートを次の担当者に引き継ぎたいと思います。