vol.12 レポーター山中 利紗 Risa Yamanaka
研修旅行5日目の5月17日・MOFパティシエであるティエリー・バマスさんのデモンストレーションの研修のレポートを担当させていただきます、プチガトー担当の山中 利紗です。
‘MOF’とは、フランス国家最高職人=フランス文化に最も優れた継承者に値する高度な技術を持つ職人に授与される称号です。
今回は、スペイン・バスク地方のアルデュード渓谷を本拠とする、バスク豚のブリーダーのピエール・オテイザさんの厨房をお借りして、バマスさんのデモンストレーションを拝見いたしました。
バスク地方の伝統菓子「ガトーバスク」を含む、3品を作っていただきました。
まず一品目の「ガトーバスクショコラ」から。
実は、デモンストレーションの2日前に、アングレにあるバマスさんのパティスリーで、ラボを見学させていただきました。
その様子は砂子のレポートでお読みいただけます。
http://www.es-koyama.com/travel/vol2.html
その際に、プレーンタイプのガトーバスクを試食させていただきました。
小山シェフも大絶賛で、「今まで食べたガトーバスクの中で一番おいしい!」とおっしゃっていました。今回はそのガトーバスクのチョコレートバージョンを教えていただくということで、とても楽しみにしていました。
いよいよ、バマスさんによるデモンストレーションの始まりです!
型にはまず、バターを塗り、粗いシュガーを付けます。
これは、焼き上がりのサブレをカリカリにするためだそうです。
また、サブレ生地にあえて大粒のブラウンシュガーを使うことで、食べた時の歯触りをよくするとおっしゃっていました。
味はもちろんですが、ケーキを食べたときの全体の食感まで深く考えられているのがよくわかりました。
二品目は、「苺とレモンのフィンガービスケット」です。
こちらのお菓子は、バマスさんが‘MOF’最終審査の際に実際に作られたお菓子です。
クランブルの上に、シート状に薄く伸ばしたライムの生地、その上に苺のコンフィ、さらにライム生地を重ね、最後にレモンクリームを塗って仕上げたケーキです。
MOF審査では、一般的には丸い形のケーキを作るのですが、ケーキの味のバランスが悪くなってしまうことも多いそうです。バマスさんはありふれたケーキでなく、何層も組み立てのあるお菓子を作りたいと考えられていました。そこでできたのがこのケーキです。
苺のコンフィにはバスク地方の小さな苺と、「マラデボア」という品種が混ぜて使われていました。苺の持つ酸味を大切にされているとおっしゃっていました。
また、ライム生地のシートは、日本のケーキ屋さんでは見たことがないような、びっくりするほど薄い生地でした‼
続いて三品目は「エスペレット・ピーマンのキャラメル」です。
ボンボンの中に入れるエスペレット・ピーマンピューレ入りキャラメルです。
エスペレット・ピーマンとは、バスク地方特産(エスペレット村のものが特に有名だそうです)の唐辛子で、日本の唐辛子ほどは辛くありません。
日本の「一味」のように、粉にして料理にふりかけたり、クッキーにしたり、キャラメルなどのお菓子にもよく使われています。
ピューレだけで食べるとピリッと辛かったですが、キャラメルやチョコレートと合わせることで、甘さとのコントラストで絶妙な辛味に変化しました。
小山シェフとバマスさんがご友人同士だったお蔭で、MOFであるバマスさんの貴重なデモンストレーションを拝見することができました。また、研修場所を提供して下さったオテイザさん、本当にありがとうございました。
また、オテイザさんのお店の1人の女性スタッフがとても印象的でした‼
ローズさんは、私たちが到着すると元気よく笑顔で出迎えてくださり、自分の持っているカメラでパシャパシャ写真をたくさん撮り始めました。
驚いたことに、その写真をすぐにショップカードのようにプリントアウトしてくださいました!
そして、部屋のフォトアルバムにすぐに小山シェフの写真を飾ってくださいました。
皆さんの温かい歓迎に、小山シェフもエスコヤマスタッフも大喜びでした‼
小山シェフは、よく、パティシエはお菓子が作れるだけでなく‘人を喜ばせることが大切’だとおっしゃいます。まさに、それを実感することができました。
いくら美味しいものが作れても、お客様が求めていなければ、いくら技術があっても意味がありません。
これからも、毎日の仕事が「ただ作り、飾る」という作業にならないよう、まずお客様の気持ちを考え、お客様の喜ぶ顔をイメージしてお菓子作りをさせていただきます。
研修に参加させていただき、本当にありがとうございました!