vol.6レポーター名嘉 利守Toshimori Naka
エスブーランジュリー担当の名嘉利守です。
研修旅行3日目の5月15日、ビルバオの近くのビスカヤ県にある三ツ星レストラン、アスルメンディでのランチをレポートさせていただきます。
こちらのレストランのシェフは、ビルバオ出身のエネコ・アチャ氏、料理界でも注目を集める若手シェフです。
児玉さん、永井さん、中島さん、辻岡さん、辻本さん、藤原さん、桂川さん、黒田さん、鏡味さんと私の総勢10名で訪れました。
まず驚いたのは、レストランをメインにしながらも、敷地内にはカジュアルレストランやワイナリー、畑もあったことです。
レストランは、ガラス張りで出来た建物で、綺麗で清潔感がありました。
まず案内されたのは、屋外の畑と温室です。
第一幕(農園)の始まりです!
第一幕(農園)
農園に入ると色んな種類の野菜たちが待っていました!初めに目にしたのは、フルーツトマトです。きれいな実がなっていると思い、よく見てみると、すでに調理済の状態で、あたかも自然に実ったかの様にセッティングされていました!他にも酢漬けの人参が試験管に入って土に埋められてあったり、カボチャのクッキーやライムのジュレなどを探索しながら食べるというプレゼンテーションに、とてもワクワクし、楽しくなりました。
第二幕(庭)
店内に入るとビックリ、目の前に見えるのは木や草や池。まるで森の中に迷い込んだ様な空間です。そこで食前酒をいただいていると、「ピクニックをどうぞ」と、バスケットが出て来ました。開けてみると、中には前菜三種が入っています。
●手作りの塩とアンチョビ ●カカオバターでパッションフルーツをコーティングしたジュレ ●お菓子の「おっとっと」のような、中が空洞のカリっとしたパンの上に、薄くスライスした魚を載せたもの
カリッとしたパンの食感が、イタリアの「グリッシーニ」のようで、おつまみをいただいているような感覚で食べられました。
第三幕(キッチン)
次は厨房に案内していただきました。
キチンと整理され、汚れ一つなく、ピカピカでした。自分たちが使っている厨房もオープンでお客様から見える空間です。常に綺麗にしよう!と改めて思いました。
ここで出て来たのが、スモークされたパン粉をまぶしたサルシージャと赤い豆のスープです。
赤い豆のスープは、ちょうど、ぜんざいのような味わいです。素材の味がストレートに生きていました。
第四幕(見て、感じる)
席に案内され、店内に入ります。ガラス張りの建物は、まるで空中に浮いている様な錯覚を感じさせられます。
ここからは、テーブルでいただいた料理の紹介をしていきます。
マッシュルームパウダーのチュイール、アーモンドのピュレ、ピーナッツのキャラメル、ヘーゼルナッツのチョコとフォアグラ。
素材の持つ特長が生きているのと、それぞれが、使っている素材そのものの形になっているのも面白かったです。
卵黄と黒トリュフ
卵黄に黒トリュフを注入したものです。
濃厚で口の中で香りが爆発する様に感じました。
「ブラッディメアリー」です。ウニとトマトの冷製スープが入ったグラスのふちに、セロリの上にウニを載せたものが添えられています。
初めにこちらをいただいてから、スープを飲みます。
「生牡蠣と海藻~海の香りと共に~」
生牡蠣の上に、エスプーマ(泡)にした塩水が載せられているという演出が楽しかったです。味も、素材のみずみずしさが生きており、海の香りが際立つ一皿でした。
「ロブスターのオリーブオイル煮」です。
低温のオリーブオイルでゆっくりと煮込まれたロブスターです。
肉厚でとてもジューシーでした。
「フォアグラ~スモークの香りを感じて~」
真っ黒なイカ墨の下には、スモークされたフォアグラが隠れています。
「イカソーメン~海鮮風味~」
イカを薄くスライスされており、食感が「噛む」というよりは「溶ける」に近く、魚介類の出汁を掛けて食べると海鮮そばを食べているようでした。
とても濃厚なイベリコ豚のシチューです。野菜、アンチョビ、バスクの羊チーズが入っており、途中でこの丸いチーズをつぶして混ぜると、また新しい、まろやかな味に変わりました。
※バスクの羊チーズ(イディアサバル)バスクの伝統的な手法で作る羊チーズ。
海緋鯉(スズキの仲間)のソテーです。下にはスパイダークラブとカリフラワーのソースが添えた一皿です。
鳩肉と黒トリュフのマッシュルームソース、スモークの香りがついたカイワレサラダ。
鳩肉は弾力もあり噛みごたえがありました。カイワレサラダは、香りを逃がさないために丸い器に入っていて、それをピンセットで食べます!
そして、デセールです。
まずは、赤い果汁(フランボワーズ)のメレンゲとチーズのアイス。
フランボワーズのメレンゲの、酸味とサクサクした食感と、濃厚なチーズのアイスの相性が良かったです。
次に、リンゴとルッコラのデセール
こちらはドライアイスでのパフォーマンスがありました。
ミントの爽やかな香りが、ドライアイスを使った煙でテーブル一杯に広がります。
このような演出は、遊び心がないと思いつかないですし、これから出てくるのは何だろう?!とワクワクできます。僕が担当しているパンの分野では、こういう演出は見たことがありませんが、ぜひ取り入れてみたい!と思いました。
「グリオットチェリーのアイスとアーモンドトフィとメレンゲ」です。
クリスタリゼしたミントは、噛むと口の中いっぱいに香りが立ち、感動しました。
グリオットチェリーのアイスは爽やかな酸味と、甘さのバランスが良く、また食べたいと思う美味しさでした。
「食後のお茶とお菓子」
私はハーブティーを選びましたが、リストの中には、日本茶も含まれていて、
なんだか嬉しかったです。
プティフールです。カカオ豆をつぶして、ローストしたもので「土」を表現し、そこにジュレをチョコレートでコーティングしたものと、マカロンショコラが並んでいます。シルバーはレモン、ゴールドはパッションフルーツ、白はミント、赤はプラリネでした。
見た目にもカラフルで、美しく、
宝石のようでした。
また、土に見立てたものの上に並べることで、植物であるカカオからチョコレートが作られているということも表現しているのかなと考えました。
今回、食べて感じた事は一品ごとにアイデアが凝らされていて、見ただけでは想像がつかない料理ばかりでワクワクしましたし、サービスに関しても、各テーブルをしっかりと見ていて、次の料理が出てくるタイミングがとてもスムーズでした。
プレゼンテーションの方法もとても新鮮でした。初めに農園から案内しながら食べる事は今まで体験した事がなく、感動しました。小山シェフも翌日のランチで体験され、「凄くいい」と感じられると、次の瞬間にはエスコヤマにも取り入れられないかと、すぐにイメージされていたそうです。
シェフと一緒に過ごせる研修旅行で、同じ場所に行き、同じものを聞いたり、食べたりしても、まだまだ私は着目点が違いますし、シェフの、常に何かを感じ、すぐに取り入れるスピードにはまだまだ及びませんが、まずは私自身も、この研修で得たことを伝えたり、新しいパンづくり、普段の仕事の中に活かしていきたいと思います。