vol.5レポーター薄永 久司Hisashi Usunaga
コンフィチュール担当の薄永 久司です。
5月15日のオプショナルツアーで訪れたレストランAsador-Etxebarri(エチェバリ)のレポートを書かせていただきます。
エチェバリは、4年前のバスク研修旅行の際、小山シェフが数名のスタッフと共に訪れた薪焼き(熾火)レストランです。帰国後にお話しをうかがったり、エチェバリで働かれていたシェフの友人でもあるbb9坂井シェフと小山シェフの『俯瞰』での対談を読んだりしていて、「一度は行ってみたい!」と思っていました。とはいえ、バスクにはそう簡単に行けるところでもありません。今回の研修旅行の行き先が バスクだと聞いて、私は、真っ先に、「エチェバリに行きたい!!」と思い、オプショナルツアーに参加しました。私を含め、7名のスタッフで、念願だったエチェバリの料理を堪能しました。
スペインバスクの街、ビルバオから約40分、人里離れた迫力ある山に囲まれた小さな村の、自然豊かな場所に、ひっそりと佇む石造りの建物がエチェバリです。
先に入店されていたシェフのグループとは、30分の時間差で席に着きました。(シェフのグループのお食事の様子は、岸本幸大さんのレポートhttp://www.es-koyama.com/travel/vol4.htmlでご覧いただけます。)
これは、コース料理を逆算し、熾き火をベストの状態にするためです。
薪を熾すには2~3時間かかるとのことでした。
時間になると、扉が開きます。
1階にはバーカウンターがあり、2階に案内していただきました。
男性スタッフの方もいらっしゃったのですが、服装がとてもラフだったので、最初スタッフだと気づきませんでした(笑)
皆、夜に備えて、ランチはミネラルウォーターで乾杯!
最初にパンが配られ、料理が次々と運ばれてきます。
岸本さんのレポートと重なる部分もありますが、私はできる限り、全てのメニューをご紹介します!
ヤギの乳バターです。
表面にスモークした塩が散りばめられているためか、ヤギ独特の香りが強すぎることもなく、食べやすかったです。
自家製モッツァレラ 原料となる牛乳はエチェバリで育てている水牛から絞ったものです。
塩控えめで、あっさりしており、独特の弾力のある歯ごたえでした。
自家製のアンチョビ 臭みもなくおいしかったです。
今年の1月に仕込んだという自家製のチョリソーを炙ったものです。
チョリソーといえば、唐辛子辛いものを想像される方も多いかと思いますが、これはほんのりスパイスが効いていました。
クラッカーの上に「シシャ」というマッシュルームのスライスが載ったもの。
マッシュルームの香りが口の中に広がり、クラッカーのパリパリした食感が良いアクセントになっていて、なんとも言えない美味しさです。生のマッシュルームは生まれて初めて食べました。
鶏で出汁をとった焼きクリームコロッケです。 焼く時に、熾き火に油をたらすことで、香ばしい香りを閉じ込めているとのことでした。
牡蠣専用のお皿で運ばれてきました。蓋を開けると丁寧に下処理されています。身はプリプリで程よい塩加減、磯とほんの少しの薪のスモークな薫りが口の中でひろがりました。
見るからに美味しそうなエビです!
殻を剥くと、溢れんばかりにぎっしり詰まったミソが絶妙な火加減で、身もプリプリ。
新鮮だからこそ出せる味だと思います。まさに絶品でした。
子蛸と蛸墨ソースです。 かわいい蛸が整列している下には玉ねぎのコンフィチュールが。
食べるのが惜しいですが、遠慮なくいただきました。
若い空豆とマッシュルーム
熾き火でソテーされだけなのですが、素材の奥深い味わいを感じる一品でした。最初に出てきた自家製チョリソーの旨みたっぷりのエキスを絡めてあるところが、隠し味のポイントなのかもしれません。
新感覚のスクランブルエッグです。
卵黄のソースと思いきや、全卵でした。撹拌しながら低温で加熱すると、卵黄の様に濃厚なソースになるそうです。
スライスマッシュルームの味わいとのコントラストが面白かったです。
グリーンピースと、グリンピースのジュース。
さっと炙った小粒の若いグリンピースです。
採れたての新芽のような青々しい香りが、口いっぱいに広がります。
鰯のソテーです。
「鰯は生臭い」というイメージがありましたが、いざ食べると、程よい焼き加減にスモークの香りで上手く生臭さが消されていました。味付けはシンプルに塩だけでしたが、素材そのものの味が生かされているなと思いました。
迫力満点!!骨付き熟成牛のステーキです。
テーブルに運ばれてきた時は、見た目に圧倒され、皆、大興奮!!
日本でも、最近食べられるところが増えて来ているそうですが、海外では熟成肉を食す文化があって、赤身肉が主流なのだそうです。
表面は焦げ目が付くほどしっかりと焼かれていますが中はレア、一口食べると柔らかく熾き火で焼いているため、ほんのりスモークした香りと香ばしさがより一層食欲をそそります。 熟成することによって赤身の旨みが凝縮されているのか、何切れでも食べられそうな勢いでした。
低脂肪ミルクアイスクリームのベリーソース添え
このアイスには、ビックリしました。スモークされたチーズのアイスクリームだと思っていたのですが、牛乳しか使っていなかったのです。
薪に火入れしたときに、一緒に絞りたての牛乳を窯に入れ、濃厚になるまで煮て、その時に薪から出る煙の香りが牛乳に移り、スモーキーな風味になるのです。
濃縮された牛乳にスモークの風味があることで、より一層チーズっぽく感じたのかなぁと考えました。
ドーナツ生地を使ったジャムパン
中には、たっぷりのベリーソースが入っています。
自家製マドレーヌと自家製ボンボンショコラです。
ごちそうさまでした!!
どの料理も本当においしく、熾き火で調理することによって素材の旨みが最大限に引き出されています。ほんのり香るスモークも味を構成する要素の一つなんだなと感じました。
「ただ、熾き火で調理すると素材の旨みを引き出せる」というわけでなく、エチェバリのシェフが素材の見極めや、調理の仕方、焼き具合、味、環境によって熾き火の状態が変わってくるなかで、工夫され、試行錯誤し、その中で発見があり、進化しているのだと思いました。
食事が終わったあと、日本人のスタッフ前田さんにお願いして厨房を見学しながら、料理や調理法、素材の解説を丁寧にしていただきました。
山積みになっている薪は、樫、楢の木です。
樫と楢は、火持ちが良く、ゆっくり燃えることで熾き火が、長持ちするそうです。
薪の中には、ぶどうの木もあり、料理によって使い分けているとのことでした。
エチェバリでは料理に使う野菜を育て、モッツァレラチーズを作るために水牛を飼育しているそうです。
自分たちで作っているからこそ、食材の良さや大切さ、ありがたさを実感出来るんだと思います。
私も、コンフィチュールで使う旬の果物を、農家様から購入しています。
小山シェフからも普段から、「農家様との関係はとても大切だ」と、おっしゃいます。
農家様と実際にお会いして、果物の育て方や熱意のこもったお話をうかがい、果物の大切さ、ありがたさを感じることで、果物を大切に育ててくださる農家様がいるからこそ、自分たちの仕事も成り立っているという感謝の心を、小山シェフは私に伝えようとしてくださっているのだと思います。
今回、念願だったエチェバリに来ることができたのも、小山シェフのおかげです。
旅行を通して、何かのきっかけを掴むことや勉強し続けることの大切さを改めて学ばないといけないと感じました。
お菓子以外にも、色々な料理を見て食べて、自分の引き出しを増やしていくことが、お菓子にも、普段の仕事にも繋がると改めて感じました。
帰国後も可能な限り、機会をつくっておいしいもの食べて、勉強したいと思います。
まだまだ旅は続きます!!お楽しみに!!