vol.8 レポーター宮澤 好Konomi Miyazawa
5月16日。
研修4日目のレポートはカフェ・hanareの宮澤が担当させていただきます。
よろしくお願い致します。
昨日に引き続き、私たちは芸術の街・ビルバオに滞在中です。
せっかくビルバオにいるのだからと、今日は朝からグッゲンハイム美術館へ…
泊まっているホテルから歩ける距離ということなので、
みんなで朝のウォーキングを兼ねて向かいます。
お天気にも恵まれ、とても気持ちの良い朝です。
小山シェフはというと、、、
あれ?いらっしゃらない??!と思いきや、
だいぶ後ろの方に発見!
急いで私たちのところに向かってくるシェフ。
その姿もしっかりキマっています。
シェフはよく“常にお客様に見られているという意識をもって、かっこよく仕事をするように。プライベートにおいても、いつ誰に見られても恥ずかしくない行動をとるように。”とおっしゃいますが、颯爽とこちらに向かってくる姿はまさにその意識の現れだと感じました。
しばらく歩いていくと、美術館の案内板が見えてきて、
有名な巨大蜘蛛のブロンズ像が出現!
大迫力です!
学生時代、教科書で見たあのオブジェが今自分の目の前にある!
興奮を覚えました。
少し早く着いたため、美術館のオープンまで近くのカフェでコーヒーブレイクをとりました。
海外ならではのオレンジ用ジューサーは見ているだけで楽しくなります。
そして朝からケーキ!笑
手前のケーキはアーモンドプードルを使ったふんわり素朴な味わいでしたが、レモンを強めに効かせているあたり、海外ならではだなと感じました。
常にアンテナを張って、〈食〉への探求心を持っているシェフは、
このようにカフェに並べてある何気ない焼き菓子でさえ見落としません。
美味しい出会いは意外なところに隠れていたりするものです。
隣の公園では、まるで子供に戻ったようにはしゃぐ男性陣。
皆、とてもリラックスして楽しんでいました。
そしてようやくオープンの時間に…
残念ながら館内の写真は撮れなかったですが、
吹き抜けの天井から重しが入ったストッキングのような生地がいくつも吊り下げられていたり、オノヨーコさんのアートワークが特集されていたり、想像もつかなかった世界が広がっていました。
アーティストの方々が、作品を通して何を伝えたいのか、どんな想いが込められているのかは、正直私には理解できませんでしたが、心で感じるものは確かにありました。うまく言葉にできないため、非常に抽象的な感想になってしまいますが、、、やっぱりアートは奥が深いなぁ。
美術館を楽しんだあとは、一旦ホテルに戻り、ドレスアップをしてレストランへランチに向かいます。
本日のメンバーは、小山シェフ・マネージャー・長野さん・原田さん・田中さん・宮澤。 以上6名です。
向かうは【AZURMENDI】(アスルメンディ)
2013年度のミシュランで3ツ星を獲得した注目のレストランです。
前日にも別のスタッフ9名がランチに訪れていましたが、皆、口をそろえて“味が濃かった”“量が多かった”とマイナスな感想ばかり…。それを聞いた私は、楽しみにしていただけにショックを受けたのですが、シェフは、「誰に聞いても同じことしか言わへんから逆に楽しみや。僕なら違う見方が出来るはずやから。ただ濃いだけの料理なわけない!」といたずらっぽく笑っていました。
ホテルからタクシーで20分。
小高い丘の上に【AZURMENDI】はありました。
沢山の緑に囲まれ、開放感溢れる最高のロケーションです。
まず案内されたのは2階のガラス張りの温室。
ここからランチが始まります。
まずはトマト。
実はこれ、ちゃんと調理されているんです。
丁寧に湯剥きされ、軽くマリネしてあるミニトマトが支柱に巻いたワイヤーの上に乗っていて、まるで収穫したてのトマトを食べているような錯覚に陥ります。
つづいてお花の中にこっそり隠れていたのは、
フラスコに入ったブラッドオレンジジュース。
ただ甘いだけでなく、爽やかな酸味とほのかな苦みが同時にお口の中に広がります。
こちらはパンプキンシードとチーズのさくさくクッキー。ミニカボチャの器がとっても可愛い!
そしてアボカドの種?!
と思いきや、カカオバターでコーティングしたアボカドクリームでした。
ホワイトチョコではなくカカオバターを使う事で、中のクリームの邪魔をせず、ダイレクトにまろやかなアボカドの味を楽しめます。
これはさすがに食べられないだろう…と思っていたら、
なんと芋のチップスでした。
ハチミツで木にくっつけてあるので、一枚一枚木の皮を剥がすような不思議な感覚。
最後は試験管に入った人参です。
試験管ごと土に埋めてある演出が楽しい!
バルサミコビネガーで浅漬けしてあるようなさっぱりしたお味でした。
これで1stアクトが終了!
素敵すぎるプレゼンテーションに完全に心を奪われた私。
小山シェフからも終始笑みがこぼれていました。
温室を出て、店内エントランスへ…
次は何だろう?ワクワクが止まりません。
2ndアクトは入口すぐのガーデンにて。
軽い白ワインと一緒にピクニックバスケットが登場!
中にはひと口サイズのおつまみが。
自家製のアンチョビやクラッカー、パッションフルーツのジャムを頂きました。
バスケットがあまりに可愛かったので、ピクニックシーズンだけでも
このスタイルをhanareに取り入れようという話も出ました。
ご期待ください!
3rdアクトはキッチンにて。
厨房には20名ほどのスタッフがいて、それぞれセクションごとに仕事をされていました。
レッドビーンズ゙のスープとブラックプディング(血のソーセージ)のフライをいただきました。
フォースアクトはテーブルにて。
ここでようやく着席となります。
真剣にワインを選ぶシェフ。
食事の間、この2種類の美味しいワインを頂きました。
ラベルもお洒落です。
全14皿で構成されたメニュー。
まず1皿目はこちら。
マッシュルームパウダーで作った葉っぱ型の薄焼きせんべいと3種類のナッツ
(ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンド)
続いて2皿目。
卵黄とトリュフの1スプーン
“スフェリフィケーション”というソース状のものをゼリーの膜で包む料理技法を用いた一品です。
(エスコヤマのケーキでも何度か使ったことがあります!)
口に入れるとまろやかな卵黄と香り高いトリュフソースが一つになり、最高のハーモニー。
3皿目。
ブラッディ―メアリー
正確に言うと、カクテルのブラッディ―メアリーに見立てた、ウニとトマトの冷製スープ。
上はサクサクの生地にウニとセロリをトッピングしたもの。
非常に飲みやすいスープでしたが、あとほんの少し塩味が必要だとシェフはおっしゃっていました。
4皿目。
牡蠣と2種のフリット、オイスターリーフ
メインの牡蠣は半生でとても柔らかく、トマトのエスプーマとも好相性。
フリットは海藻と肝の2種。
オイスターリーフとは名前の通り、牡蠣の味がする野菜でした!
びっくりするほど牡蠣そのもの。
5皿目。
ロブスターのロースト、スイートチャイブとオリーブのソース
ロブスターの火通りが抜群で身はプリプリ!オリーブ、チャイブとも非常によく合っていて、個人的に一番美味しいと感じた一品です。
6皿目。
フォアグラのスモークと炭
上の黒い部分はイカ墨のクリーム、その下にはフォアグラが隠れています。
よく混ぜて、バゲットにディップして頂きます。イカ墨がフォアグラのしつこさをいい意味で消しているので、非常に食べやすかったです。
7皿目。
いかそうめん、トビコ、イカ墨コロッケ
いかそうめんは、きしめんの様に平たく、熱を入れてあるので口の中で溶けていきます。スルメでとった出汁が美味しくて、和を感じる一品でした。
8皿目。
イベリコ豚のシチュー、バスクチーズとともに
シチューの中にはイベリコ豚のパンチェッタやアスパラ、エシャロット、アンチョビが入っており、濃い味付けでしたが、ゼリーの膜で包んだイリアサワーチーズというバスクのチーズと一緒に頂くと美味でした。
9皿目。
レッドマレットとスパイダークラブ、カリフラワーのソース
レッドマレットとは欧州の高級魚、スパイダークラブとはタカアシガニのこと。
魚のソテーの下に敷いているカニのソースが濃厚で、淡泊な白身とのバランスが良いと感じました。
10皿目。
子鳩のコンフィ、トリュフソース
子鳩は身が柔らかく、嫌なクセもなくおいしくいただきました。
底に敷いているパルメザンと白トリュフのピュレが味に奥行きを与えていて、贅沢な一皿でした。
11皿目。
ラズベリーのメレンゲ、ハーブのクリーム
ここからはデセールです。
まずはメレンゲ菓子。クロワッサンをイメージした巻貝のようなフォルムが可愛い一品。
ハーブのバタークリームも上品な甘さです。
12皿目。
アップルとルッコラ、ミントの爽やかさと共に
左側の写真の正体は、ドライアイスの上にミントを敷いて、液体窒素をかけたもの。
ミントの爽やかな香りが心地よく、モクモクの煙の演出も素敵です。
デセールもアップルとリンゴのピュレが非常にさっぱりとしていて、
こんな組み合わせもアリなんだ!と、新しい発見がありました。
13皿目。
アーモンドトフィーとグリオットのソルベ
トフィーというと甘いイメージがありましたが、ここでのトフィーは甘くなく、添えられているカリカリのシュガーでお好みの甘さにして頂くというスタイルでした。
ソルベの下にもトフィーを敷いていて、hanareでもキャラメルを敷いたりして遊びを加えてみたいと思いました。ちょっとしたことですが、こういうことをするかしないかでお店のレベルに差が出てくるのだなと気づかされました。
14皿目。
プティフールたち
最後のプティフールも豪華でお洒落でした。
この日は長野パティシエのバースデイだったので、お店の方にご協力頂き、花火のサプライズを!
少し照れた笑顔の長野さん。
素敵なお祝いができて良かったです。おめでとうございます!
最後に。
小山シェフ、Azurmendiに連れていってくださり、本当にありがとうございました!
温室の野菜に始まり、ガーデン、キッチン、テーブルと、レベルの高いプレゼンテーションを経験して、自分ももっと上を目指さなければとひしひし感じました。今のhanareでは出来ないことも勿論ありますが、出来る事も沢山あるはず。一歩前進するきっかけを頂いたような気がします。パティシエも料理人もエンターテイナーであることを忘れてはいけません。変化を楽しめる人でありたい、そう強く思います。カフェのこれからの事、しっかり見据えていきます!